幕の内弁当で失敗するプレゼン

目指すべきは「日の丸弁当型」のスライドデザイン

残念なプレゼンの代表格が「幕の内弁当型プレゼン」です。鮮やかな食材が並ぶ幕の内弁当ですが、数日前に食べたお弁当でさえ、その中身をすべて正確に思い出せる人はいません。そこにプレゼンの落とし穴があります。

華やかなPowerPointスライドが完成した時こそ要注意

幕の内弁当型のプレゼンは、まずスライドが華やかです。美しい画像やポップなイラスト、カラフルな文字、多彩なフォント、おまけに背景画像まで、あらゆるパーツが豊富に揃っています。一見すると、凝った造りの上手なパワポ。そのどこがダメなのでしょうか?

聴衆の目線で考えてみましょう。多くの要素が並ぶスライドが現れたとき、お客さんはどこに視線を向けるでしょうか。鮮やかな画像や、目立つフォントに目が行く人もいるでしょうし、話者の論点を無視して自分が見たいものだけを注視する人もいます。それは極めて自然なこと。だからこそ、話者が自分自身に問いかけるべきポイントは「このスライドで本当に必要な情報はどれか」であり、極限までその要点に絞り込んだスライドづくりを徹底することが重要です。

理想的なプレゼンは、話している内容とスライドの情報が常にシンクロします。スライドに余計なモノが増えるほど、「聴衆が見ているモノ」と「話者が見せたいモノ」は一致しなくなります。そのズレを予防するためにも、徹底して不要なパーツを取り除いておく必要があるのです。

語りとスライドの内容が無駄なく一致する「日の丸弁当型」

情報量を極限まで省き、焦点を絞ったスライドが「日の丸弁当型」です。蓋を開ければ梅干しだけ。それしかないから、誰もがその梅干しを見ます。それしかないから、何日たっても内容を思い出せます。これが幕の内弁当との決定的な違い。残念ながら、そんな「日の丸弁当型」のシンプルなプレゼンはあまり見かけません。背後には、日の丸弁当の梅干しに相当する「最も重要なポイント」を話者自身も理解していない、という皮肉な現状があるのかもしれません。

幕の内弁当型のスライドを回避するコツは、1枚1枚のスライドの役割を明確にし、必要なパーツだけで各スライドを作成することです。背景に敷く画像やカラーも、本当に必要でしょうか。スライドをデザインする時には、「何を入れようか」ではなく、「何を入れなくてもよいか」「本当にこのパーツは必要か」と問いかけてみてください。

要点が絞られたスライドが続くと、プレゼンテーション全体に程よい緊張感が生まれます。幕の内弁当の豊富な食材の中から、実は梅干しが一番重要だと分かった時に、ほかはすべて聴衆にとって不必要だったんだと気づきます。話者の語りとスライドがシンクロし、スライドをめくるたび、常に話者と聴衆がひとつの論点に集中し続けるのがプレゼンのあるべき姿です。次回、幕の内弁当を食べる時に思い出してください。

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