コンテストに挑戦する/しないの分岐点で学生の背中を押す

学生の可能性を引き出して声をかけるのは教員の役割

※これは教員向け(教え方)の記事です。

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学生にとって避けるべき損失は、成功の機会を失うことです。コンテストの挑戦が初めての学生は、大会応募に何の意味があるかも分かっていません。スピーチコンテストやプレゼンコンテストを通じて得られる経験の価値を説き、学生の成功の可能性を後押しするのは教員の役目です。

積極的な情報提供を通じて学生の挑戦意欲を引き出す

学生の性格は様々です。何でもとりあえずやってみようという者もいれば、能力はあるのにスタートラインに立とうとしない学生もいます。どのような学生が相手でも、等しく挑戦の意味を説き、コンテストに関する情報提供を怠らないようにしてください。

教員はともすれば、英語力や熱意の観点から「可能性のありそうな学生」だけに声をかけてしまいがちです。しかし、コンテストは数か月から半年以上をかけて取り組む大きな課題です。目先の熱量や英語力と、長い目で見た持続力や上達レベルは、必ずしも一致しません。

大会情報が先生のもとに届いたら、その時が「コンテストに挑戦する意義」を学生に説明するチャンスです。ぜひ担当クラスにおいて、学生全体に出場を呼びかけてください。意外な学生が「興味がある」と返答する場合があります。公平性の観点からも、先生から特定の学生に個別に声をかけるのは全体への周知後、しばらく経ってからが望ましいです。

予選の素材に多少不安があっても応募は済ませる

情報提供の機会を通じて、学生に学外大会への挑戦を呼び掛ける際には、熱意のある学生を先生がしっかりサポートすることを伝えてください。即座に挑戦を志願する学生はまずいません。最初は学生の関心を高め、興味を引き出します。そこから挑戦への熱意へと結びつけるためには、学生に対する先生の支援が必要です。

迷っている学生がいれば、例外なく背中を押してください。後になって学生から「出たかったのに」と言われることほど、学生と教員の双方にとって無念なことはありません。それは学生の人生における成功の機会損失です。

大会出場に挑戦する学生が決まれば、予選までのタイムライン(時系列の計画)づくりにかかります。学生の「現時点の英語力と熱意」は当然のこと、先生が指導に割けるリソースも計画に影響します。まずは「現時点の状態」と「目指す状態」を書き出し、学生にとって最も学びが得られる練習(指導)計画を考えてください。

予選締切までに応募素材の仕上がりに不安が残ることもあるでしょう。ダメでもいいから応募するというのは少々乱暴ですが、誰にでも可能性はあるわけですから、まずは応募を済ませるのが正解です。

コンテスト準備は内容重視、語りが不安なら100本ノック。

全国オープンの大会では英語力よりも「内容」が問われます。それでも、スムーズに聴衆とのコミュニケーションがとれるだけの英語力があることは大前提になります。発音を含む英語の表現技術(delivery)に不安がある学生には、「100本ノック」のような音読トレーニングを始めさせてください。

過去記事「長さが足りないスピーチは大会応募を断念すべきか」でも書きましたが、予選応募後に大切なのは「予選結果を待たず練習を続けること」です。大会に不慣れな学生であればなおのこと、このタイミングで必要なのはスピーチの「慣れ」を獲得するための練習時間です。予選結果を待たず、指導を続けてください。もしこの大会で予選敗退となっても、次の大会でその練習成果が輝きます。

初めて学外大会に挑戦する学生が予選応募まで到達できれば、本人にとっては十分にやりがいを感じているはずです。先生に背中を押してもらい、スピーチを共に練習できたことは、学生にとって既に貴重な学びになっています。

かつて私の研究室に所属していた学生が、「先生には、背中を押すどころか、背中を蹴られる勢いで(笑)出場を勧めてもらった」と学生時代を振り返ったことがあります。結果的にその学生は全国優勝を果たして卒業しました。教員が学生の可能性を見出し、挑戦を勧めるからこそ、学生が得られる成功体験があるのです。

学生の人生を変える(かもしれない)可能性がある限り、教員の皆さんには、学生に出場を勧める姿勢を持ち続けてほしいと願っています。


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