講演会 報告|英語スピーチの教え方・学び方:これまでの10年・これからの10年
三重県高等学校英語教育研究会|2025/6/3 三重県津市

2025年6月3日(火曜日)午後、「三重県高等学校英語教育研究会 春季研究会」(主催:三重県高英研、会場:三重県総合文化センター・生涯学習センター大研修室)が開催され、三重県下の高校英語教員約50名が集まる講演会で講師を務めました。今回の演題は「英語スピーチの教え方・学び方:これまでの10年・これからの10年」。現役の英語教員の先生方とともに、AI時代を生き抜き、コンテストで勝ち続ける「英語スピーチ教育の本質的課題」を議論しました。
「授業実践/コンテスト対策/AI時代のスピーチ教育」を議論
三重県高英研主催の研究会にお招きいただくのは10年ぶり2回目です。講演では、前回の重要な論点のおさらいに始まり、(1)授業実践、(2)コンテスト対策、(3)AI時代のスピーチ教育、の3点を中心にお話をしました。
最初のテーマ「授業実践」では、何気なく英語授業で実践されがちなスピーチ活動が実質的な意味を持たないリスクを指摘しました。一つひとつのスピーチ課題に適切な目標を設定し、その経験を蓄積することの重要性をお話しました。
続く「コンテスト対策」では、コンテンツ(本文の中身)の大切さを再確認したうえで、これまで過去10年度連続での全国入賞を実現した、研究室独自の「スピーチ構造用紙」の活用方法を説明しました。スピーチコンテスト審査員としての経験をふまえつつ、独創性に基づくトピック選択がいかに重要であるかについても、あわせて解説をしました。
最後にお話したのは「AI時代のスピーチ教育」についてです。技巧的な英語スピーチを追い求めていては、AI時代を勝ち抜くことはできません。適切に生成AIを活用しつつも、AIとの関係においてはスピーカーが主導権を持ち続けることが必要。スピーチ活動とは、究極的には「人間である聴衆と人間である話者がスピーチを通じて共鳴する活動」です。誠実さを伴った人間力がAI時代を勝ち抜く鍵となることを説明しました。
誠実で人間力あふれる話者を育てることが英語教員の使命
「英語スピーチコンテスト」というと、いまだにそれが「英語技術コンテスト」であるかのような誤解があります。かつては、英語が上手なスピーカーが、自分自身の関心のあることを話せば入賞できたような時代も確かにありました。でも今は違います。
社会とどう向き合うか、諸々の課題にどのような解を示すのか、そして社会をどう変えたいか。現代のスピーカーに求められているのは、こうした社会と関わるスタンスを明確にスピーチで示すことです。とても論理的ですし、ある種、哲学的であるともいえます。
生成AI等のテクノロジーの発展に背中を押される中、我々英語教員は、初等・中等・高等教育の境を越えて、誠実で人間力あふれるスピーカーの育成に尽力すべき時期を迎えています。誠実なスピーカーを育てる取り組みは、英語スピーチ教育における「これからの10年」を支える大きな柱となるはずです。
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