英語スピーチで心境変化を描写する「風見鶏アプローチ」とは

話者の心変わりを表現する風見鶏指数の変化を意識する

英語スピーチにおける心境変化の風見鶏的アプローチ トップ画像

心境の変化をネガティブに表現する「風見鶏」という言葉がありますが、英語スピーチでは、この「心変わり」こそが演出上の重要な鍵になります。スピーチで心の変化を描写することを、私は「風見鶏アプローチ」と呼んでいます。その効果的な活用を検討してみましょう。

話者の人生で強く風が吹く瞬間を描写する

話者が何らかのテーマで人を説得しようとする場合には、話者がその判断を「優れている」と信じるに至った経緯や経験があるはずです。それは何かの発見であったり、誰かの言葉であったり、様々です。そうしたきっかけが、話者の「風見鶏」を動かした強い風ということになります。

スピーチでは、自分に何らかの「強い風」が吹いたことによって「何らかの価値観」と信じるようになったいきさつを共有することが大切です。誰しも人生は一度きりですから、他人の人生を左右した「強い風」のストーリーには、聴衆は自然に興味を持ってくれます。

多くの場合、話者にその「強い風」が吹くまでは、違う向きに心の風見鶏が向いていた場合が多いはずです。話者の心の風見鶏を動かしたきっかけをスピーチで具体的に描写することで、聴衆の共感を得ようとするのが「風見鶏アプローチ」です。

英語スピーチにおける風見鶏アプローチは、よく次のような表現で登場します。

  • At first, I thought ~. However, a turning point came when I ~.
    [最初、私は~だと思っていました。でも私が~したとき、大きな変化が訪れたのです。]
  • My perspective shifted dramatically after I ~.
    [私が~したあとで、私のものの見方は大きく変わりました。]
  • At last, his kind words changed my mind.
    [彼の優しい言葉が、私の気持ちを変えたのです。]

風見鶏を動かす強さとタイミングを感じ取る

風見鶏的アプローチの具体例を考えてみましょう。ありきたりですが、たとえば「リーダーシップとは何か」というテーマのスピーチはどうでしょうか。以下は、架空のストーリーです。

高校時代に生徒会長を経験していた話者は、「リーダーシップとは人を指揮して引っ張ること」だと考えていました。しかし、大学に入ってクラブの部長を務めたとき、仲間との不調和を感じます。そこで話者は「リーダーとは何なのだろう」と悩み始めます。← この時点が、風見鶏に風が吹き始める瞬間です。

クラブの仲間と話をする中で、メンバーが考えるリーダー像と、自分が信じてきたリーダー像にズレがあることに気付きます。← この時点で風見鶏がカタカタと動き始める音がします。

ある時、クラブの顧問から「お前はプレイヤーとしては一流だが、仲間への配慮が足りないのではないか」と指摘されます。← ここで風見鶏は大きくに揺れ始めます。

その時、経営学部の授業で受けた「リーダーシップ論」の教科書で、「リーダーとは他人を引っ張るのではなく、仲間に寄り添って支える人」という文章を見て、これまでの自分の態度を変えようと決意します。← この瞬間に、風見鶏が音を立てて向きを変えます。

その後、クラブの雰囲気も良くなり、部長としての信頼も高まったのでした。← この時点には、もう風見鶏は今までと違う方向を向き、心地よい風が通過しています。

この経験から、聴衆の皆さんにも「人に対する優しさや配慮が大切であることを理解してほしい」と呼びかけます。← ここは、聴衆の風見鶏を動かそうと自分から風を吹かせて(説得を試みて)いる段階です。

スピーチにおける「風見鶏指数」をイメージしよう

上の例でいえば、風見鶏は「心変わり」という見えない動きを視覚化するためのメタファ(比喩)として作用しています。どこから、どのように風が吹くか。どの程度の風で風見鶏が揺れ、動き出すのか。心の風見鶏の動きに敏感になることは、スピーチで無理のないストーリーを展開するヒントになります。

風見鶏を動かす力を「風見鶏指数」と名付けましょう。いきなり指数が高く振れるストーリー展開は、基本的には不自然です。でも不自然だからこそ、突然の強風を演出することで、聴衆の注目を集めることは可能です。

その例が、冒頭でショッキングな経験や事故、事件を述べるスピーチです。風見鶏指数が振り切れてスタートするので、とりあえず聴衆の注目を集めることはできます。ただし、いきなり風見鶏がフルスピードで回転するストーリーは例外的で「不自然」ですから、その驚きだけが聴衆の印象に残り、本来覚えてもらうべき話者の主張が霞むという失敗事例も見られます。

スピーチのストーリーテリング(storytelling)において、心変わりは重要なポイントです。どのようなきっかで、どのような心境の変化があったのか、あるいは無かったのか。心変わりの描写の際には、ぜひ風見鶏を意識してみてください。

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