【 審美眼 】面白くて優れたスピーチテーマの原石を見極める目力

論理性だけでは完成しない「聴衆との一体感」を生むテーマを探す

【 審美眼 】テーマの原石を見極めてスピーチを成功に導く トップ画像

美しいものを美しいと見分ける能力のことを「審美眼」と呼びます。英語スピーチやプレゼンテーションでは、テーマ選択の時点から「優れたモノ」を見抜く力が試されます。その判断力を身につけるには、多くの「優れたモノ」「ダメなモノ」を見て、感じる心を養う努力が必要です。

論理性は必要条件であり十分条件ではない

スピーチにおける「優れたテーマとは何か」という問いには、ある程度、論理的かつ教科書的な回答が可能です。「独自性のある社会問題を扱うのが良い」「自分の経験と関連させられる話題が良い」「重要性をデータで論証できるものが良い」「具体的な解決策が出せると良い」などがその例です。でも最終的に「これだ!」と決める瞬間には、論理性の域を越えた判断が働きます。

そこで必要なのが「審美眼」です。教科書的には優れているテーマでも、実際に発表する話者との相性のほか、発表場所や機会の条件、発表する時期や時代性などによって、テーマの優先順位は変わります。スピーチのテーマ決定には、理論的な推奨パターンや、論理的判断を越えた「スピーチとしての美しさ」を見極める審美眼が求められます。

スピーチも芸術も、論理性だけでその良し悪しは説明できません。スピーチの参考書やインターネット上のアドバイスは、スピーチのテーマ選定における基本的な「必要条件」ではあっても、それで満足する「十分条件」ではありません。要は、日頃から多くの優れたスピーチに触れ、そのテーマの適格性を自分なりに検討する経験を積むことで、スピーチの審美眼を磨くことが大切です。

最高のテーマになりうる原石を捨てている?

英語スピーチやプレゼンのテーマ選定について、私の授業や講演会では、8つ以上の候補を一つずつ説明してもらう課題を出します。候補は多いほど良いですし、多くのテーマを考えることで、社会を多角的に見る意識が生まれます。しかし問題が起きるのは、その後の「候補を絞る」段階です。

テーマの候補を絞り込む際、多くの人は、論理性や教科書的な観点から優先順位をつけます。でもそのプロセスにおいて、一般論の基準に則れば排除されがちな候補の中にも、キラリと光るテーマが隠れています。つまり、最高のテーマになりうる「原石」を、躊躇なく捨ててしまう人が意外に多いのです。

原石を見極める審美眼が磨かれるまでは、信頼できる先生や複数の友人に「自分が考えた全てのテーマ候補」を見てもらいましょう。候補は多いほど良いです。「宝の原石を捨て、ゴミを大切に残す」ことがないように、自分で考えた候補は、あらかじめ自分で選定せず、すべてを見せてください。

私の研究室では、チラシ裏面のメモ程度の候補であっても、検討されたテーマはすべて確認します。学生本人はつまらないと思っていても、私が見れば「珠玉の原石」であることが多々あります。こうした検討のプロセスを、関係者全員で共有することで、スピーカーの審美眼を高めあっているのです。

審美眼は、スピーチの本質的な魅力を見極める力です。面白いものでも、つまらないものでも、多くのスピーチに触れて「スピーチ審美眼」を育ててください。そして「なぜ面白いのか」「なぜつまらないのか」の理由を自分なりに整理してみると、審美眼は自然に磨かれていきます。

次にスピーチのテーマを考える際には、宝の原石を捨ていないか、改めて確認してみてください。


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