スピーチやプレゼンではYes/Noを断定して論点を明確にする
断定する不安に負ければ、スピーチ全体がボヤけた印象に。

意見を求められた時、つい「どちらも良いですが…」と口ごもってしまった経験はありませんか? 英語スピーチやプレゼンで聴衆を惹きつけて納得させるには、YesかNoか、まずはあなたのスタンスを明確にすることが不可欠です。勇気をもってどちらかの立場をハッキリさせれば、それだけであなたの主張はもちろん、論点までもが明確になります。
「どちらともいえる」は結局なんの主張にもならない
話題の大きさは違っても、目の前の問題に対して、肯定か否定かを示すことはスピーカーの大切な役割です。まずは議論する問題に対して自分のスタンスを明確にしないと、その後の論証が始まらないからです。
その象徴的なケースに、資格試験などで課されるスピーキングテストがあります。検定試験等のパブリックスピーチでは、与えられた問題文(課題文)に対する意見陳述を求められます。その際、つい断定を避けがちな日本文化的発想で「どちらも大切」とか「どちらかを安易には決められない」などと言う人がいますが、これらは話者がみずから自分の境遇を厳しくする回答であることに気づきましょう。
英語の検定試験などでは、問題文に対する賛否だけで得点が決まるわけではありません。あくまでも賛否を支える「論述の展開」が重点です。ゆえに、その「展開」の基礎となる方向性を曖昧にすると、賛成・反対の両方について適切に論証をする必要があり、その後の論述の展開が大変複雑になってしまうのです。
Yes/Noのキレの良さが、聴衆の理解をうながす。
二者択一あるいはYes/Noで主張可能な内容については、どちらかの立場を明確にして、その根拠や証拠を2~3例示しながら論を運ぶのが正解です。自分と異なる主張に理解を示すのも論述のテクニックとしては存在しますが、安易に反対意見をサポートすると、話者の立ち位置がボケてしまいます。そうしたテクニックは、あくまでも基本的な主張がきちんと立てられるようになってからの応用技術だと理解しましょう。
神経質に考えれば、世の中の問題はYes/Noで断定できるほど単純ではありません。だからこそ、賛否を明確に語る「キレの良さ」が、スピーチそのものの視界をクリアにしてくれます。大阪弁で言えば「要するにどっちやねん」というツッコミが出ないように、常にハッキリさせておくということです。
言葉は多いが主張が複雑なスピーカーと、言葉は少ないが主張が明確なスピーカーのどちらが共感を得られるでしょうか。シンプルさが追求される英語スピーチやプレゼンテーションにおいては、自分の主張やビジョンを常にクリアに示すことが、聴衆の信頼度につながります。
根拠のある自信、丁寧な論証、そして誠実な笑顔で。
Yes/Noをハッキリさせるのが怖い人は、恐らく聴衆からの反論が不安なのでしょう。そんな心配は不要です。賛否や何らかの選択をハッキリ示したあとで、「なぜそう考えるのか」を説明する論証のプロセスを丁寧に運べば、聴衆の納得は得られます。
たとえば実際の論証では、「第1に…、第2に…」と理由を順に紹介したり、「こう判断する最も大きな理由は〇〇です」のように理由までハッキリ断定するのも、メッセージを強く響かせるのに役立ちます。要は、聴衆から「なぜそう思うのか」という問いに、先回りして回答することが大切です。
判断が難しい場面だからこそ「A案が最適です」「私は賛成です」「改善点は〇〇です」と断定する"根拠ある自信"に、聴衆は話者への信頼感を覚えます。もちろんですが、その判断に至った理由を丁寧に説明することが前提です。極論をいえば、Yes/Noどちらの立場をとっても、異論を唱える人は必ず存在します。ゆえに、YesかNoかで心配するよりも、丁寧に論証する姿勢を示すほうが合理的です。
断定するのが得意な人、苦手な人がいると思います。何らかの立場を示す必要があるときには、ズバリと言い切る姿勢を大切にしてください。この小さな心掛けが、聴衆の信頼を勝ち取ることにつながります。断定する際には、自信過剰と受け止められないように、誠実で穏やかな笑顔で語ることを併せて覚えておきましょう。