コンテストや資格試験の即興スピーチを乗り切る「3点サンドイッチ」構成術

導入と結びの間で「3つの論証(具材)」を挟み込む"3点サンドイッチ"

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わずかな準備時間で即発表する「即興スピーチ」は、構成力と発信力が問われる難しい課題です。良い成績を残すことも当然大切ですが、まずは与えられた制限時間を何とか話し続け、とりあえず無事に乗り切るための対応策を考えてみましょう。少し長い記事ですが、いつか役に立つ「即興スピーチの基本的な向き合い方」を理解していただけるはずです。

基本はスピーチの「サンドイッチ構造」

即興スピーチ(extemporaneous speech, impromptu speech)でも、暗唱スピーチ(prepared speech)でも、その構造はスピーチ共通の「サンドイッチ構造」をとります。まずは、過去記事「プレゼンターが知るべきサンドイッチ型の3層構造に慣れよう」で基本的なサンドイッチの仕組みを理解しましょう。

タイトルの「3点サンドイッチ」とは、3層構造(導入・本論・結び)で出来ているサンドイッチの具材(本論)の部分に、「3点の論証材料」を挟み込むことで、コンパクトで分かりやすい即興スピーチを作ろうという考え方です。

基本的なことですが、スピーチはパワーポイントを使ったプレゼンとは違い、どこまでが導入で、どこからが結びかを「見せる」ことができません。それだけに、サンドイッチの上下のパンの役割を成す「導入」と「結び」については、わかりやすく構成して話す必要があります。

その意味において、サンドイッチ構造を意識すれば、「導入」と「結び」が自然とハッキリしますので、まずはサンドイッチ構造に欠かせない「上のパン(導入)」と「下のパン(結び)」で話すべきことを考えるだけでも、はるかにスピーチらしく聞こえます。

与えられたテーマをどうサンドイッチに"加工"するか

即興スピーチは、TOEIC® Speaking & Writing TestsやTOEFL® iBT、および英検®1級の2次面接で求められるほか、福澤杯(慶應義塾大学)や天野杯(独協大学)など全国トップクラスの英語弁論大会において発表/審査の一部に組み込まれます。

時間の長短に違いはあっても、テーマの決定から主張の構成までの基本的な向き合い方は同じです。サンドイッチの「上のパン」(導入)と「下のパン」(結び)を確定するための主要なポイントを紹介します。

▶ 1. テーマ:「語りたいテーマ」より「語れるテーマ」を選ぶ

自分がテーマを選ぶ余地があるなら、心が動かされる「語りたいテーマ」より、自分が十分に「語れるテーマ」を選ぶことが重要です。どれだけ興味深いテーマでも、それを扱いきれるだけの素材や技量がなければ、即興スピーチは成立しません。

聴衆受けや話題性で選ぶのではなく、あくまでも論点が立てやすく、かつ関連事例が探しやすい話題を選ぶ方が安全です。自分の英語力に照らし、背伸びをしないことが最終的に落ち着いた発表につながります。

(A)若者とインターネット、(B)若者と政治、(C)若者と医療、という3つのテーマの選択肢があるとします。それぞれの項目を検討してみましょう。どのテーマが最適かの「正解」はありませんが、この例でいけば(A)(B)を選んでおくのが無難なようです。

  • (A) 若者とインターネット
    日常生活に親しみがある分だけ、多くの学生の興味はこのテーマに偏りそうです。一方で、その偏りの分だけ「ありがちな話題」に終始しやすくなるリスクがあることを覚えておきましょう。
  • (B) 若者と政治
    学生にとっては興味は薄いかもしれませんが、具体的な事例が豊富にあり、ニュース性も反映しやすいテーマです。その分だけ、「主張」も立てやすいテーマだといえます。
  • (C) 若者と医療
    専門知識や専門用語を扱えないと話せない話題の一例です。よほどの意図がない限り、このような専門性の高い話題はあえて選ばないほうが無難です。
▶ 2. 論点と主張:ひとつの論点(問題点)を定めて主張を固める

テーマが決まれば、その大枠の中で話の焦点をなる「論点」を決めます。論点とは、すなわち「社会における問題点」のことです。たとえば「(A)若者とインターネット」であれば「ネットゲームへの没頭」、「(B)若者と政治」であれば「若者の投票率の低迷」などが考えられるでしょう。

論点(問題)が決まれば、そこから導き出される「主張」を考えます。主張は、「○○○は✕✕✕すべき」といった形に落とし込みます。たとえば、(A)と(B)のテーマでの論点と主張は、次のような階層になります。

  • テーマ(A):若者とインターネット
    • 論点:ネットゲームへの没頭
      • 主張:教育委員会はネットリテラシー教育を強化すべき
  • テーマ(B):若者と政治
    • 論点:若者の投票率の低迷
      • 主張:政府はデジタル投票を推進すべき
▶ 3. 導入と結論:問題を解決するための主張を固める

論点と主張が決まれば、それを第1段落の「導入」(introduction)と、最終段落の「結び」(conclusion)の両方に配置します。これが、サンドイッチをつくる「上のパン」と「下のパン」になります。これにより「導入と結びで同じことを主張する」というサンドイッチ構造の基本が完成します。

ここまでのプロセスは、即興スピーチの長さに関わらず同じです。あとは、サンドイッチに挟む3つの"具材"、すなわち「例示や論証の材料」を考えるプロセスに進みます。

ここまでのパーツを並べると、導入に約20〜30秒、結びに約20〜30秒、合計で約40〜60秒(1分)が、サンドイッチの上下のパンに充てられる計算になります。つまり「即興スピーチの制限時間」からこの時間を引いた長さを、サンドイッチの具材(論証材料)で埋めることになります。

論証(具材)3点のサンドが基本。制限時間により逸話も活用!

論証材料は3つが基本です。この3つの論証材料をパンで挟み込む「3点サンドイッチ」をイメージしましょう。どんな論証材料を入れるかは、サンドイッチの具材部分に割ける「時間(尺)」によって決まります。「上のパン(導入)」と「下のパン(結び)」を除いた制限時間別の基本的な考え方を紹介します。

▶ 論証時間が30秒程度:TOEIC® Speaking & Writing Tests など

TOEIC® Speaking Testの意見陳述問題では、画面上で指定された1つのテーマについて、45秒で内容を考え、60秒間で即興スピーチを発表します。スピーチ全体の長さが1分間ということは、論証材料の説明に割ける時間は30秒程度ということになります。

極めて発表時間が限られていますので、3つの論証材料(具材)を挟むのは難しいかもしれません。そんな時は「2つ(時間が許せば3つ)の論証材料の概要」を端的に紹介するのが基本です。"There are [two / three] reasons."と切り出して、First, ... Second, ...と主張の根拠を簡潔に紹介していけば、それですぐに時間は到達します。

それでも時間が余ってしまうという人は、事前の練習が必要です。ひとつの論証材料ごとに10秒なり15秒なりの時間枠を設定し、ひとつの話題を紹介するのに必要な時間配分をあらかじめ体感しておくことをお勧めします。

▶ 論証時間が1分程度:英検®1級 二次試験 など

英検®1級の二次試験では、5つのトピックの中から1つを選び、1分間で内容を考え、2分間で発表します。全体の尺が2分ということは、論証に割ける時間は1分~1分20秒程度です。

3つの論証材料の概要をそれぞれ20~30秒程度で紹介し、それでも時間が余れば関連する逸話(ストーリー)を手短に紹介すれば時間いっぱいになります。ここでいう「逸話」は、自分が設定した主題や主張に直接関連するものでなければなりません。いわゆる「余談ですが…」といった話題を付け足すのはやめましょう。

また、無理に「流暢に」話そうとしないことも大切です。落ち着いて話せば、それだけ考えながら話す時間が稼げます。1分あたり90~100語程度の落ち着いたスピードで構いません。全体の制限時間が2分ですから、トータルで180~200語程度の分量を「安定して話す練習」をしておくと、当日は落ち着いて試験に臨めます。

▶ 論証時間が2分以上:英語スピーチコンテストなど

ハイレベルな英語弁論大会では、「エクステンポ・スピーチ」(即興スピーチ)が課されます。これは "impromptu speech"を省略した「インプロ」とも呼ばれ、おおむね制限時間が3~4分程度と長いのが特徴です。

論証部分だけで2分以上ある計算になりますから、3つの論証材料を順番に並べるだけでは、最後に大幅に時間が余ってしまいます。そこでお勧めするのは、効果的に時間を埋めるために、テーマや論点、あるいは3つの論証材料のいずれかにまつわる逸話を適宜織り込むことです。

たとえば「(A)若者とインターネット」のテーマであれば、「初めてインターネットに触れた時の記憶」や「初めてスマホでゲームをした時の感動」などを「本論(body)」の冒頭で紹介するのです。そのうえで、論点から主張へと話を展開すれば、説得力のある、スピーチらしい構造に聞こえます。

いずれにせよ、即興スピーチの準備時間はとても短いので、通常の暗唱弁論のように完全なリサーチをすることは不可能です。具体的な数値データの代わりに、引き出しやすい「逸話(ストーリー)」を語って聴衆の共感を得るのが効果的です。テーマから思い出されるストーリーの描写は、論証時間が短い即興スピーチにおいても活用できる技術です。

即興スピーチは緊張しますが、ぜひ日頃から、何気ない話題からストーリーを引き出す練習をしておいてください。その継続的な努力が、即興スピーチを発表する際の自信や存在感につながっていくはずです。


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