英語スピーチにおける「怒り」の効果的な使い方

怒りによって聴衆の共感を獲得し解決策に誘導する

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英語スピーチコンテストの舞台上でずっと怒っている人がいます。社会問題に噛みつく意識はとても大切で、情熱的であることは素晴らしいのですが、怒りだけでは何も生まれません。怒りの後には解決策を提示し、聴衆の感情を誘導してください。

怒りを建設的解決策への手掛かりに

スピーチコンテストで審査員をしていると、感情に満ち溢れたスピーカーに出会うことがあります。情熱的であることは話者の大切な素養ですが、中には怒るだけ怒って帰っていくスピーカーがいます。それでは社会は何も変わりません。

やり場のない怒りを表現することは、スピーチの演出としては何も問題ありません。大切なのは、その上で具体的な解決策を提示して、解決に向けた協働の輪に聴衆を呼び込むことです。問題を嘆き、怒りを露わにすることで、聴衆の一定の共感は得られるかもしれませんが、怒りだけで問題が解決することはありません。

説得型スピーチ(persuasive speech)の究極の目的は、弁論を通じて社会を良くすることです。問題に対する怒りよりも、その解決に向けたプロセスで勝負してください。

怒りは人の感情を揺さぶるという研究

怒りは、効果的に使ってこそ意味があります。スピーチで「怒りの感情」を表すことが、聴衆への説得力を強化するという研究(Abdyrazakova et al., 2025)も、その特徴をとらえたものです。

この論文でAbdyrazakovaらは、「戦略的に表現された怒り」は話し手の信頼性と権威を増幅させることができると論じています。一方で、過度の怒りは話し手の主張を損ない、また聴衆を遠ざけるとも指摘しています。つまりは、怒りのバランスを成す「程度」が重要になるということです。

スピーチで怒りを「演じる」のは、なかなか高度な表現技法(delivery)です。本気で怒りを爆発させる人に聴衆は心を開いてはくれません。でも適度な怒りの共有は、聴衆の問題意識を喚起します。怒りは、聴衆のうなずきが得られる範囲で表現するのが望ましいのです。

怒りは解決策への導入に使いましょう。何より大切なのはその先にあるべき解決策や明るい未来であることを、改めて認識しておいてください。


(Reference)
▶ Abdyrazakova, M., Isakova, K., & Kultaeva, N. (2025). Anger in public speeches and debates with a focus on speech strategies and tactics. Bull. Sci. Pr., 11, 371–379.

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