英語スピーチ原稿の単語の語尾が「滑る、消える、詰まる」原因と改善方法
明瞭さを意識して「丁寧に子音を鳴らす」練習をしよう

スピーチやプレゼンの原稿の音読練習をしていると、全体としては上達しつつも、所どころ「語尾が滑る、消える、詰まる」といった現象が発生します。これらは時折「語尾の子音」を十分に意識して音読練習することで改善されます。練習のプロセスにとり入れるようにしましょう。
語尾が滑る → 最後の音に丁寧さをプラスする
「語尾が滑る」というのは、語尾の発音が「曖昧に聞こえる」現象のことです。音読練習が上達するタイミングでよく起こります。簡単に言えば「語尾が雑に聞こえる」とも表現できます。
単語一つひとつを全て同じ明瞭さで発音する必要はありません。でも練習を重ね、音の流れに慣れてくると、ついつい口まわりの筋肉を使う力を抜いて「省エネ英語」になりがちです。すると、本来ならしっかり調音されるはずの単語が、こもって聞こえます。
過去記事「enunciation 脱・省エネ英語」でも説明していますが、多くの聴衆を相手にするスピーチでモゴモゴとした発音は避けるべきです。「単語の語尾は滑りやすい」という自覚を持ってハッキリ話す。これだけで、語尾が滑るというミスは避けられます。
語尾が消える → 原稿の暗記を改めてチェックする
「語尾が消える」というのは、2つの原因があります。ひとつは「語尾が滑る」のと同様に発声が弱くて語尾が聞こえずに「消えてしまう」という現象。もうひとつは原稿の暗唱(メモライ)が不十分または不安定なことが原因で「そもそも発音するのを忘れている」という状況です。
前者の場合は明瞭さ(enunciation)に気を付けてしっかり発音すれば良いですし、後者についてはもう一度原稿を見直しながら丁寧に原稿をチェックする必要があります。
特に消えやすいのは語尾の"s"です。その代表格が複数形の"s"。そして三人称単数現在形(三単現)の"s"です。文法的観点から考えれば"s"が消えることはあり得ません。でもこれが消える背景には、そもそも「言葉の意味を十分に理解して伝えきれているか」という根本的な課題が見え隠れします。
「語尾が消える」という指摘を受けた時、あるいは自分のプレゼン動画をチェックして「語尾が消える」と気付いた時には、自分が音を頼りに暗記をしていないかを振り返ってみましょう。原稿にある「誰が(主語)、何を(目的語)、どうした(動詞)」という要素を振り返りながら練習すれば、"s"が消える現象は次第に改善されます。
語尾が詰まる → 次の単語へと急がないようにする
「語尾が詰まる」というのは、本来あるべきリズムや間(ま)が失われて、次の単語に移ってしまう現象です。
語尾が詰まる要因は2つあります。ひとつ目は、語尾の子音の破裂音が脱落する現象(リダクション)がうまくいかず、本来残るはずのリズムまで脱落すること。もうひとつは練習不足の状態で本番を迎えたスピーカーが、緊張や、原稿を忘れないようにと「次の単語へ急ぐ」ことによるリズムの脱落です。
まず前者「リダクションの失敗」です。英語の発音において、t, d, p, b, k, g (破裂音)で終わる単語は、後続の単語とのつながりによって音が脱落する「リダクション」(reduction)が発生します。"good people"が「グッドピープル」ではなく「グッ_ピープル」となるのは正常な発音です。ところが、音だけでなく「リズム」まで脱落して「グピープル」になることがあります。これにより語尾のリズムが「詰まる」のです。
この現象を防ぐには、意識的にリダクションをせずに発音する練習が効果的です。音はどこか冗長なリズムで違和感を感じますが、語尾が詰まって後続の単語に流れ込むようなことはなくなります。そのうえで、改めてリダクションを有効にして練習すると良いです。
そして後者「緊張による急ぎ」です。英語は、単語単体にも強弱があり、句・節や文章にも、そして前後の文章相互にも、それぞれ適切なスピードやリズムがあります。それが緊張などで焦りが出ると、次の単語、そしてまた次の単語へと、急いで発音してしまいます。その結果、語尾にあるべき「微妙な間」が詰まってしまい、語尾の響きが失われるのです。
緊張による語尾の詰まりを回避するには、緊張をほぐすために、暗記チェックを含む練習を十分に繰り返します。さらに、それぞれの文章で訴えたいメッセージを確認し、自分の気持ちを丁寧に語るように意識しましょう。とにかく「次の単語へと急がない」こと。自分自身が落ち着いていると認識できるまで、練習を重ねることが結局は解決の近道になります。
語尾の丁寧さは、そのまま聴衆の聞きやすさに直結します。「滑る、消える、詰まる」を乗り越えて、お客さまの耳に優しいプレゼンができるように練習を続けましょう。
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