車の交通広告とプレゼンの共通点は、瞬間認識力への配慮にあり。

伝えるべきポイントをとことん絞る工夫の原点を知る

なぜ、多くの情報を話すとプレゼンは失敗するのか? そのヒントは、街中を走るクルマの交通広告にあります。街中を走るクルマを眺めていると、様々な広告文言が並んでいる車両に遭遇します。それらは時に、文字が小さすぎたり情報が多すぎたり、一瞬で通り過ぎる瞬間には認識できないものが多くあります。これと同じ失敗が、プレゼンテーションやスピーチにも当てはまることを覚えておくと、残念なプレゼンを予防できます。

「たくさん伝えたい」と「何が大切かわからない」の矛盾

先日も、車両後部にカッティングシートが施された店舗広告つきの車を見かけました。電話番号、営業時間、詳細な住所、がそれぞれ2店舗分、さらに店舗名は別の専用ステッカーでそれぞれ賑やかに貼ってありました。しかし、それでもさっぱり分からなかったのは、それが「何屋さんか」という情報です。

お店にしてみれば「何屋さんか」は当たり前すぎて掲載しなかったのか、あるいは掲載し忘れたのかもしれませんが、その時点で広告を「見る側」への配慮が欠けていることは明らかです。

交通広告、特に車両用の広告は、一期一会であることが多く、しかも見てもらえる時間も極めて限られています。そんな時、伝えるべき最も重要な情報を見失うと広告としては致命的です。一期一会の一瞬で伝えるべき車両広告では、2店舗分の詳細よりも「何という名前の、何屋さんか」が遠くからでもハッキリ視認できる方が重要になります。

この教訓は、パワーポイントを使ったプレゼンテーションにも当てはまります。過去記事「PowerPoint|スライドは「1枚3秒ルール」で要約できる情報量に絞る」でも触れましたが、最も伝えたいことが「漏れなく」パッと見てサッと理解できなければプレゼンとしてはもう失敗です。

「必要な情報を厳選し、余計な情報を排除する」というのは、交通広告にもプレゼンにも共通する重要なポイントです。口頭で伝えるメッセージについても、多くを語るほどに焦点がボケるようであれば、語数は絞り込む方が効果的です。

そうしてシンプルに構成されたスライドがテンポよく進むと、聴衆は苦労せずプレゼンについていくことができます。さらに情報の消化不良にもなりません。

スライドを使わないスピーチでも情報を絞ること

パワポを使ったプレゼンのほかに、スライドを使用しない口頭発表やスピーチにおいても、情報を絞る工夫はとても有効です。スピーチの原稿を見直してみれば、そこにはいくつか段落が並んでいますが、それぞれの段落において、最も伝えるべき情報を邪魔するような要素はありませんか?

先ほどの車両広告でいえば、電話番号・営業時間・住所も確かに大切ですが、瞬間的に認識してもらううえで重要なのは「名前と業種」です。それほどに各段落の情報がシンプルに絞り込めているかを確認してみましょう。

実際には、各段落は論証と修飾によって構成されますから、ある程度の分量が必要になります。そこで重要なのは、それ以外の「必ずしも必要ではない情報が混ざっていないか」をチェックすることです。

パワーポイントで作成したスライドが1ページごとにリズムよく消化されていくように、スピーチにおいても、1段落ずつ「なるほど、なるほど」と聴衆が理解できる情報量に留めて、聴衆に優しい発表にする配慮が必要です。そのための簡単なチェックリストを以下に示します。

交通広告に学ぶ「情報の厳選」

  • 各スライドや段落で、最も伝えたいことは何か?
    交通広告の「名前と業種」に相当する、核心的なメッセージはどれか。
  • その情報を伝えるために、絶対に削れない要素は何か?
    プレゼンやスピーチに必要な「論証や例示」のプロセスは適切か。
  • "あればなお良い程度の情報"の優先度を下げられないか?
    車両広告の「電話番号や住所」に相当する、(興味のある人向けの)追加情報の位置と量を見直す。

交通広告もプレゼンもスピーチも、発信する側は情報を盛り込みたいものです。それでも、まずは興味を持ってもらうことが何より大切です。そのためには、あえて情報を減らしてみるという逆転の発想がプラスに作用します。

ぜひ街中で様々な広告を眺めながら、自分のプレゼンやスピーチのクセを振り返ってみてください。今後の洗練されたプレゼンテーションのために、きっと役に立つ気付きがあることでしょう。


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