「大事なことなので2度言いました」はスピーチでこそ使うべき"論点反復の技"

「音の反復」と「意味の反復」で論点を刷り込むテクニック

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スピーチで同じ表現を繰り返すと「くどい」と思われる、そんな先入観のせいで、大切なメッセージを伝えるチャンスを逃しているかもしれません。 スピーチやプレゼンテーションでは、大切なことを繰り返すのはごく自然で効果的なテクニック。そこで大切なのは、音のリズムを工夫する「音の反復」と、主旨を変えずに言葉を変える「意味の反復」です。これが"論点反復の技"。その具体的なポイントと実践方法を紹介します。

1度でダメなら2度目の挑戦。さらにダメ押し3回目!

SNSなどでユーモラスに使われる「大事なことなので2度言いました」というフレーズ。元々は、タフデント(小林製薬)のCMが由来のようです。でもCMでは、除菌というキーワードを3度言っている点が興味深いところ。要点を何度も繰り返すのは、テレビCMやラジオCMの定石です。コマーシャルと説得型スピーチの共通点については過去記事「説得型スピーチは「2階建ての未来図」を描く明るい未来で締める」でも触れましたが、「論点反復の技」もそのひとつです。

スピーチコミュニケーションの分野で、大切なことを繰り返す技術をrepetition (反復)といいます。スピーチ中に何度も繰り返すことで、そのメッセージを聴衆の脳内に刷り込むのが狙いです。これはスピーチの定番レトリック(修辞術)のひとつとして広く知られています。

たとえばオバマ元アメリカ大統領(Barack Obama)の"Yes, we can"、古くはキング牧師(Martin Luther King, Jr.)の"I have a dream"。これらはスピーチの中で何度も繰り返される印象的なフレーズで、強く耳に残ります。このふたつは「2度言いました」を大幅に超えた反復レトリックの実例です。

そこで、一般的な説得型スピーチで応用できる「論点反復の技」を紹介しましょう。取り組みやすいやり方は、「音の反復」と「意味の反復」です。以下で順に見ていきましょう。

なんとなく"立派"に聞こえる「音の反復」テクニック

まず「音の反復」です。これは、文字通り同じ音、すなわち同じ英語表現を繰り返すことで、同一のリズムを刻む方法です。先に例示したオバマ氏とキング氏の手法と、基本的には同じです。

たとえば「これは私たちが忘れてはならないことだ」という論点を「音の反復」で強調してみます。その際、"This is something we should ..."から始めて、文章を2つ作ってみます。それらを同じような口調で連続して話せば「論点反復の技」は完成です。

  1. This is something we should all remember.
    [これは私たちが忘れてはいけないことだ。]
  2. This is something we should consider right now.
    [これは私たちがまさに今、考えるべきことだ。]

どちらも簡単な文章ですが、"This is something we should"が繰り返されることで、「ふたつの文章でひとつの主張」という雰囲気を作り出すことができます。いわば、ふたつの文章が畳みかけるような合わせ技を構成しているのです。これがレトリック(修辞)の力です。

同様に、何か印象的な出来事を振り返る際の表現でも、"I will never forget ..."を繰り返すことで「音の反復」の効果を演出することができます。

  1. I will never forget this evening we spent together.
    [私は、皆さんと一緒に過ごした今宵を忘れることはありません。]
  2. I will never forget the fond memories we have all shared.
    [私は、皆さんと共有した楽しい思い出を忘れることはありません。]

簡単なことを話していても、何となく立派に聞こえる。それが「音の反復」の魅力です。ぜひ試してみてください。

大事なことなので(言い方を変えて)繰り返す「意味の反復」

次に「意味の反復」を考えましょう。大事なことなので2度言うのは同じですが、音の反復とは異なり、「言葉を変えて同じ内容を改めて伝える」というものです。たとえば、スピーチの中盤で話した主張を、スピーチの後半あるいは終盤で、言葉を変えて繰り返す、といった具合です。

その際、同じ内容を繰り返していることに「あえて気付かせる」というテクニックがあります。それが、"I will tell you once again"という言葉を使って、意味の反復を始めるという方法です。

  • I will tell you once again that we should stop using smartphones on the train platform.
    [もう一度言います。私たちは電車のホームでスマホを使うのをやめなければなりません。]

こうして「あえて気付かせる」テクニックは、まさに「大事なことなので2度言いました」とハッキリ言っているのと同じです。このように、あえて言わなくても済むような表現でわざわざ聴衆に気付かせる工夫は、スピーチやプレゼンでは一定の効果があります。

大切なことを繰り返すのは、退屈なことでも、くどいことでもありません。「大事なことなので2度言いました」の精神は、聴衆に「そこが大事だったんだ」と気付かせる配慮でもあります。

4分程度のスピーチであれば、「音の反復」も「意味の反復」も、それぞれ2~3回程度であれば、まったく問題ありません。それ以上は耳障りとなってわざとらしく聞こえるので、やり過ぎには注意が必要です。もちろん、反復の技術を使う際には、それが「反復」であることを伝えるようなデリバリーが必要であることは言うまでもありません!

スピーチで論点を刷り込むには、論点反復の技。「論点反復の技」です。大事なことなので2度言いましたよ!


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