数字を入れてスピーチの解像度を上げる

数字が持つ描写力をプレゼンで効果的に活用しよう

数字を入れてスピーチの解像度を上げる

簡単に言葉のイメージを明確にする方法があります。それはスピーチやプレゼンに「数字」を入れることです。なんとなく抽象的な表現でも意味は伝わりますが、数字を使うとさらに言葉の解像度が上がります。

形容詞よりも数字の方が絵が見える

「多くの人」よりも「100人もの人」。「重たい荷物」より「20kgもある荷物」。数字は言葉の描写力を加速します。表現されるイメージも客観的になり、話者と聴衆が同じ「絵」を頭の中で共有することもできます。

「あの人の話は、なんだか説得力があるな」と思えるスピーチには、ちゃんと数字が入っています。最近はエビデンス(証拠)という言葉がよく使われますが、そこまで厳格なものでなくても構いません。どこかで数字を入れてみてください。

"A long time ago" の代わりに "35 years ago" と言ってみる。"I saw a tall building" の代わりに "I saw a 30-story building." と言ってみる。小さなことですが、数字を意識するだけで、言葉の解像度が上がります。

普段あまり意識することがない人は、試してみると言葉の雰囲気の変化に気づくでしょう。

アナログ形容詞とデジタル数字の特徴

数字の描写力の強さを覚えると、つい多くの形容詞を数字に置き換えたくなります。でもやりすぎると話者に理詰めな印象を与えるので注意が必要です。形容詞と数字には、もともとの性格に違いがあります。

形容詞はアナログ的な存在です。具体的な規模を述べなくても、「多くの人」と言うだけで、その文脈から、聴衆は何となくその多さを理解できます。正確な事実とは程遠くても、とりあえず理解できてしまうのは、このはアナログ的な便利さであり、怖さでもあります。

一方、数字はデジタル的な存在です。100人もの人、と言えばそれは「100人という事実」を端的に述べているにすぎません。それを多いと感じるか、少ないと理解するかは聴衆の裁量です。しかし、100という数字のおかげで、話者と聴衆とは正確な事実を共有することができます。ここが形容詞のアナログ的作用とは異なります。

どちらが良いかは一概には断定できませんが、どちらかだけに偏るのが良くないことは確かです。

形容詞と数字を戦略的に組み合わせる

実際のスピーチやプレゼンテーションは、様々な要素がバランスを取り合って成立しています。普段は意識することが少ない「形容詞と数字のバランス」も、そのひとつです。

たとえば、形容詞を多用する中で、時に数字でビシっと押さえる。あるいは逆に、数字の多い語りで理路整然と説明しておいて、その印象を語る際だけ形容詞を使う。そんな風に両者のバランスを戦略的に調整することで、スピーカーの人間的印象をコントロールすることもできるのです。

数字は、それが事実であれば聴衆はその話を否定できません。ゆえに論証の場面では欠かせない存在です。でもそのために「理屈的で冷たい人」という印象を持たれないよう気をつけましょう。

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