スピーチで遠くまで届く豊かな声は聴衆を超える距離を意識することから
目の前にいる聴衆の"さらに向こう"を意識できるか

スピーチの初心者を悩ませるのが「声が出ないこと」です。スピーチやプレゼンテーションには、マイクの有無に関係なく、"presentation voice" (発表用の声)とも言われる「深く豊かな声」を出すことが求められます。大きな声を身につけるコツは、聴衆の「さらに向こう」を意識することです。
豊かな声が出せない2つの理由
舞台に立ってスピーチをすることに慣れていない人は、つい「いつもの声」で話してしまいます。これでは、話者の熱意や誠意を十分に伝えきることはできません。まずは会場の隅々にいる聴衆に、しっかりと届く声を出すことが必要です。
マイクがあっても「声が小さい」と言われる場合、その原因は2つあります。まず、大きな声を出すことに慣れていないので、そもそも「声が出ない」こと。もうひとつは、聴衆へ届けるべき「必要な声の大きさ」を小さく見積もってしまうことです。
最後列の「その向こう側」へ語り掛ける
ひとつめの「声が出ない」については、過去記事「普段は使わない領域を使ってこそスピーチ用の声や語りは豊かになる」を参考に、「しっかり息を吸って、豊かな声を出す」ということに慣れる必要があります。「ちょっとうるさいかな」と思うくらいの声がでるまで発声練習を続けることで次第に改善されます。
ふたつめの「必要な声の大きさを小さく見積もる」について、少し説明をします。私たちは、誰かに声をかけて話をする際、都度「必要な声量」を適切に判断して声を出しています。これにより、最大と最小の音量の幅(ダイナミックレンジ)が決まります。
声が小さいと言われる人は、そもそも「必要だと考える声量」の設定が小さくなっている場合があります。これを改善するには、実際の会場の「一番後ろ」が、その会場の「中心」だと仮定し、それを強く意識することです。つまり、実際の会場の一番後ろよりも、「実はもっと向こうに聴衆が居る」と考えるのです。
この意識を持つことで、「必要な声量」がスピーチやプレゼンに適した基準に調整されます。すぐには大きな声は出ないかもしれませんが、それを意識し続けることで、「単にマイクの前で喋っている」という印象から、「豊かに声が響いている」という雰囲気に変わっていきます。
会場の隅々まで、豊かに声が響いてこそプレゼンター
基本的なことですが、スピーチやプレゼンを発表するプレゼンターは、会場の隅々までしっかり届く声を出すことが必要です。マイクに口を近づけて叫べば、誰でも「大きな声」を響かせることができますが、それはスピーチに必要な「豊かな声」ではなく、単に「うるさい音」です。
過去記事「演台での発表はマイクを無視して聴衆に語りかける」でも説明しましたが、マイクがあろうと無かろうと、プレゼンターは、マイクではなく「聴衆に向かって」豊かな声で語りかけることを期待されています。
舞台に上がる時には、ぜひ「日常の声のレベル」をリセットし、プレゼンター用の「声量の新基準」を意識して大きな声でゆっくり話し始めてください。それだけで、プレゼンの印象は間違いなく自信に満ちたものになります。
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