熱弁は演技か本物か?コンテストの審査員が注目する舞台裏の話者の真剣度

コンテストの時「だけ」真剣なスピーカーは結局信用されない

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コンテストの舞台で社会問題を熱く語っていたスピーカーが、ステージを降りると別人のように冷めていることがあります。大会審査員としては、舞台上でも舞台裏でも、スピーカーには常に「本物」でいてほしいものです。本物を感じるポイントは「社会問題を解決する覚悟」です。この大切さを振り返ってみましょう。

社会問題の解決を目指すのか、単なる入賞狙いか。

スピーチコンテストの審査員が出場者と対面できるのはコンテスト終了後です。それまでは、審査員と出場者が対面しないよう厳格に配慮されているのが一般的です。ゆえに、審査員がスピーカーの「素顔」を知ることができるのは大会終了後。すべては発表が終わってからのお話です。

舞台で熱弁を披露したスピーカーに、大会後に対面するのは楽しみなものです。しかし時折、ステージで見せていた社会問題への熱意がどこか感じられないスピーカーが存在します。対面すると、「なぜ入賞できなかったのか」「どうすれば勝てるか」「新しいテーマの相談がしたい」、そういった質問が真っ先に飛び出すのも、こうしたスピーカーの特徴です。

そんな時、私はそのスピーチテーマに向き合う本気度に疑いを覚え、とても残念な気持ちになります。彼らの関心は「社会問題の解決」ではなく「コンテストの勝利」にあります。その姿勢が見え隠れするために、誠実さを欠いた「作り物の熱意」だと感じてしまうのです。

スピーチコンテストは「英語スピーキングコンテスト」ではありません。自分がとりあげたテーマについて誰よりも真剣に向き合い、その姿勢もまるごと審査されるものです。コンテストで勝つためだけに、そのテーマと向き合うような姿勢では、そこに「本物」としての深みや重みは感じられません。

聴衆や審査員を裏切らない誠実さを忘れずに

随分前の話になりますが、食べ残し(今でいうフードロス)問題を取り上げて、素晴らしいスピーチをした学生がいました。ところが、大会後の立食パーティーで、その学生は派手に食べ残していました。つい数時間前のスピーチに背を向ける、不誠実さを感じたのは私だけではないはずです。

本気で社会問題と向き合うスピーカーは、大会後の講評会(チュートリアル)においても、自然と「どうすればその問題をもっと多くの人に訴えられるだろう」という議論になります。なぜなら、誠実なスピーカーは、常にその社会問題と向き合っているからです。

どれだけ真剣に向き合っているかは、簡単に数字で測れるものではありません。しかしそれは「人間的説得力」(エトス)となって、スピーチ全体の訴求力に表れてきます。コンテストの入賞とは関係なく、その問題と誠実に向き合う姿勢は、とても尊く貴重なものです。

皆さんが次にコンテストを観覧する機会があれば、ステージを降りたあとのスピーカーに注目をしてみてください。その姿は、舞台での熱弁以上に、話者の真の姿を語っているかもしれません。審査員もまた、その本当の姿を見逃すことはありません。


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