英語スピーチにライブ感を演出する!意識的なfiller(つなぎ言葉)の活用術
フォーマルな語りに「リアルな」fillerを織り交ぜるテクニック

「フィラー」(filler)といえば、次の言葉が出てこなくて困った時に、その時間的空白を埋めるための「つなぎ言葉」です。英語スピーチやプレゼンのコンテストでは質疑応答の際に無意識に使っている人は多いはず。このフィラーを暗唱スピーチ(prepared speech)に意識的に応用することで、スピーチのライブ感を演出するテクニックを紹介します。
fillerの基本は思考時間を確保し、言葉の空白を埋める。
fillerとは、直訳すれば「埋めるもの」という意味です。コミュニケーションにおいては、すぐに答えられない質問の回答を考えたり、うまく自分の気持ちを表現する言葉が思いつかない時に、その間のわずかな沈黙を埋めるために使われる言葉の総称です。
代表的なfillerには、"uh" [あー]、"hmm" [うーん]、"well" [えーっと]などがあります。これらの他にも、英会話では、"you know" [あのー]、"you see" [ほら]、"I mean" [つまりは]などのfillerを使ったことがある人は多いでしょう。
これらはいずれも、即興型の発話に伴う「空白」を埋める言葉です。スピーチコンテストの舞台では、質疑応答の際に、これらをうまく使って滑らかな対話を演出することはひとつのスキルです。ただし、fillerを頻発すると、会話が「間延びした」印象を与えるので、使いすぎには注意が必要というのが一般的なアドバイスです。
fillerを暗唱スピーチに織り込み、言葉のライブ感を出す。
そんなfillerには、「カジュアルな即興性」という色彩が強く表れます。ゆえに、fillerを暗唱スピーチに応用すると、本来フォーマルな響きの語りの中に、あたかも「即興的に話しているかのような空気」を演出することができるのです。次のふたつの例文を見比べてみましょう。
- I found a small shell on the beach. It was very beautiful.
私は浜辺で小さな貝殻を見つけました。それはとても綺麗でした。 - I found a small shell on the beach. Well, it was very beautiful.
私は浜辺で小さな貝殻を見つけました。いやぁ、それは実に綺麗だったんです。
①②のどちらも、美しい貝殻を見つけたという事実は同じです。しかし、そこに通常のスピーチ原稿ではあまり使われない"Well,"を織り込んだことで、その瞬間から、「今まさにストーリーを語っている」というライブ感が生まれています。
もうひとつ例を見てみましょう。英語スピーチで過去を回想するストーリーテリング(storytelling)の一幕に登場しそうな表現を用意しました。
- He was very kind. That's why I loved him.
彼はとても優しかった。だから私は彼を愛していました。 - He was very kind. I mean, that's why I loved him.
彼はとても優しかった。そうなの、だから私は彼を愛していたのね。
これもまた、[1][2]のどちらも、優しい彼を愛していた事実は同じです。でもそこに"I mean,"という一瞬の心の空白がfillerで表現されたことで、その後のストーリーに深みや色彩(いわゆる「エモさ」)が加えられていることに気づくでしょうか。
fillerは本来、リアルな会話で使われるものです。それを意識的に暗唱スピーチに「転用」することで、完全に暗記された固定原稿にリアルな命が吹き込まれたような演出が可能になるわけです。
リアルな語りを再現できなければ逆効果になることも…
ここでひとつ注意があります。暗唱スピーチで意図的にfillerを使った文章は、それが「あたかも自然なfillerであるかのように」表現しなければなりません。それができなければ、完全に逆効果になるリスクもあります。だからこそ、fillerがバシッと決まった時の演出効果は絶大です。
少々難しいかもしれませんが、暗唱スピーチでfillerをリアルに使うためのポイントを紹介しておきます。参考にしてください。
- ポーズ(間)を使う
fillerを言う前、あるいは言った後に、一瞬の間(pause)を置くことで、「今、まさに次の言葉を考えている」という雰囲気を演出できます。 - 視線(アイコンタクト)を使う
fillerを言う際に、一瞬だけ視線を落とすと、原稿のスムーズな流れから少し外れて、「今、まさに思いを巡らせている」という感情を表現できます。 - ジェスチャーを使う
fillerを言う際に、手を少しだけ軽く動かすようなジェスチャーを添えると「今、まさに考えながら話している」という印象を与えられます。
fillerを暗記型の英語スピーチに応用するのは少々高度なテクニックですが、もし使えそうな場所があれば、ぜひ挑戦してみてください。
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