大会の質疑応答(Q&A)で評価が下がる!審査員が見抜くチェックポイント
大会審査員は「演技か」「本物か」を質疑応答で見極める

英語スピーチやプレゼンテーションのコンテストにおいて、発表は完璧なのに、質疑応答で急に自信を失ってしまう話者に心当たりはありませんか?Q&Aも審査項目には含まれますが、配点は全体の1~2割で多くはありません。むしろその点数よりも審査員が重視するのは、スピーカーがブレのない「一貫した世界観」を示せているか、です。
Q&Aになって急に崩れ出すスピーカーはとても多い
大会審査員をしていると、暗唱スピーチ(prepared speech)の発表は断トツに上手だったのに、質疑応答になった途端、急に表情が曇って声に覇気がなくなるスピーカーを見かけます。きっと皆さんもこのような場面を目撃したことがあるでしょう。実はここに「質疑応答を設ける狙い」があります。
質疑応答には、なんとか暗唱スピーチを「うまく演じ切ろう」とする話者を見極める役割があります。つまり、どれだけ数分間の「スピーチ演技」が上手でも、審査員にはそれが「作りモノ」だと簡単にバレるわけです。その最たる要因は、スピーチから質疑応答まで「一貫した世界観」が保たれていないことにあります。
目線、表情、姿勢、声質、態度、ジェスチャーなど、スピーチ中には完璧なデリバリー(発表技術)だったのに、質疑応答になると急に不安定になるのはその一例です。このような場面に遭遇すると、審査員は「なんだ、スピーチは演技だったんだ」と察します。まさに話者の「エトス」(人間的な説得力)が失われる瞬間です。
これは単に、質疑応答の英語が上手か下手かという問題ではありません。話者の世界観とは、スピーチで訴えた問題に立ち向かう「話者の存在感」のことです。英語が多少下手でも、自分がスピーチで扱う問題については誰よりも自信を持ってほしいのです。それが失われると、審査員は大いに幻滅します。
質疑応答の技術的な問題よりも心構えを磨く時間を
質疑応答をそつなくこなすために、想定問答集を作ったり、質疑応答の会話力向上を目指して練習をすることは決して無駄ではありません。短い回答を心がけたり、聞き取れなかった質問をアクティブリスニング(active listening)で聞き返したり。こうした上達法などは、ネットで検索すれば簡単に見つかるでしょう。
だからこそ、私からあえてお伝えしたいことがあります。質疑応答の本質的価値は、これらの技術的な問題よりも、質問に回答する「スピーカー自身の人間的魅力」にある、という事実です。
スピーチでとり上げた社会問題に真剣に向き合っているなら、当然に答えられるであろう質問にあたふたする話者を信頼できるでしょうか。スピーチでは堂々たる発声とジェスチャーを披露していたのに、質疑応答では急に声が細くなり、目線が泳ぎ出す話者が信頼に値するでしょうか。
暗唱スピーチと質疑応答を通じた合計時間すべてが、ひとつの「プレゼンテーション」だという自覚を持ってください。両者に極端なギャップを感じさせることの無いよう、「話者の世界観」を統一しましょう。
英語力よりも「信頼できる人間性」を見せる質疑応答に
極端なことを言えば、英語力は二の次でも構いません。審査員をはじめとする聴衆に、質疑応答を通じて「なるほど、やっぱりこの人なら信頼できそうだ」と思わせてほしいのです。
質疑応答のテクニカルな対応力は、少し練習すれば身につくかもしれません。しかし、「人間的な信頼性」はそう簡単に身につくものではありません。審査員は簡単に「作りモノ」を見抜きます。だからこそ、自分のスピーチの主張を心に刻み、「自分はこの思いを伝えるために舞台に立っている」という使命感にあふれる姿を示すことが大切です。
審査員が投げかける質問は、話者を攻撃する意図はまったくありません。スピーカーの思いが「本物か」が試されていると考えて、堂々と審査員や聴衆と向き合い、答えを返してください。きっとうまくいくはずです。
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