スピーチコンテストでは「自分は主役ではない」と心掛ければ上手くなる

ワンマンショーではないからこそ、聴衆への心遣いが必要。

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スピーチコンテストの審査員をしていると、自分の発表をまるで「ワンマンショーの舞台」のように振る舞うスピーカーに出会います。良く言えば自信たっぷり。悪く言えば自己陶酔型で、聴衆の頭上には多くの「?」が浮かびます。コンテストでは「自分は主役じゃない」と意識するだけで、聴衆の分かりやすさは大きく改善します。

主役ではないからこそ、聴衆に理解してもらう努力を。

よく「コンテストは出場者一人ひとりが主役」という言葉を耳にします。主催者から見れば確かにそうですが、その言葉を真に受けて「自分が主役」という雰囲気を醸し出すスピーカーを聴衆は快く思いません。まず、この点を覚えておいた方がよいです。

コンテストの会場にいる聴衆は、それぞれの出場者の応援団であったり、一般客や審査員であったりと多様です。間違っても、全員が特定のスピーカーの登場を心待ちにしている状況ではありません。もっと率直に言えば、「自分が聴きたいと思っているスピーカー以外」には関心さえ無い人も多いのです。

そんな状況でスピーチをするわけですから、「私が!」「僕が!」といった態度で登場するスピーカーが歓迎されるはずがありません。まずは心の中で、「突然失礼いたします。どうか聞いてください」と願うくらいの気持ちで語り始めることが大切です。

実際にそうすることで、ゆったりと適切なスピードになり、声は大きく豊かになり、表情は優しい笑顔になります。これらはすべて、「見知らぬ人々の集合体」である聴衆に耳を傾けてもらう上での最低限の配慮です。

練習を重ねるほどに「聴いてもらえる」と錯覚する

ところが、スピーチの練習を重ねるほどに「自分の世界観」が確立され、それをいきなり舞台上で聴衆にぶつけるようになってきます。その背後には、「これだけ練習したのだから、聴衆も聞いてくれるはず」という錯覚があります。

残念ながら、ほとんどの聴衆はあなたのスピーチを聞くために会場に来ているわけではありません。にもかかわらず、あなたのために人生の数分間を提供すべき状況にあります。ゆえに、スピーカーに「聴く気のない人に耳を傾けてもらう姿勢」がなければ、聴衆の耳にも心にも響きません。

ぜひ練習を重ねるほどに謙虚になり、聴衆に聞いてもらえるように配慮をしてみてください。過剰な演出、無駄なイントネーションやジェスチャーも、誠実な発表のためには不要なことが多いはずです。そうやって無駄なものを取り払っていく中で、スピーチで本当に大切なメッセージが際立ちます。

発表に自信が持てるようになるほど、自己陶酔型に陥りやすくなります。そこで大切なのは「聴衆の貴重な時間を拘束する事実」に感謝する謙虚な心構えです。聴衆への配慮を優先する姿勢こそ、スピーチで分かりやすさや誠実さを体現する近道になります。


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