「要するに」と自分に問いかける"in short"で端的な語りを演出する
意識的に本題に迫るひとことを使うだけで言葉が変わる

プレゼンやスピーチで、つい話が長くなってしまうこと、ありますよね? 伝えたいことが多すぎて、言葉を重ねるうちに論点がぼやけてしまうのは、多くの人が陥りがちな失敗です。この悩みを解決するのが、たったひと言の魔法のフレーズ「要するに」(in short)です。日本語でも英語でも、この言葉を意識的に使うだけで、その後に続く語りは瞬時にシンプルになり、聴衆の心にハッキリ伝わります。
次の語りの方向性を誘導するサインポスティング
もっと詳しく、もっと正確に、と考えるほど言葉は増えていきます。「少し難しい話になっているかな」と感じた時、即座にその内容を簡単に整理するための導入句が「要するに」です。この言葉を使えば、次に続く文章はおのずと簡潔になります。
多くの聴衆を前にプレゼンをする際は事前に原稿を作るので、基本的に難しすぎる文章は登場しないはずです。その一方、アドリブで追加の話題に触れる際や質疑応答の場面など、即興で話をつなぐ際には、話者の日頃のクセが現れがちです。少しでも「話し過ぎたな」と感じたら、即座に「要するに」と言い、直前の話の要点を繰り返すと、スッキリと話が収まります。
このように次の話題の方向性を牽引することを「サインポスティング」(signposting)といいます。日本語なら「要するに」と言い、英語では"in short"となります。面白いことに、この表現は日本語でも英語でも同じように使えるサインポスティングです。
即興的な使い方のほか、あらかじめ「仕込む」方法もあり。
スピーチやプレゼンテーションにおける「要するに」の用途は、即興スピーチだけではありません。事前に書き下ろす原稿に、あらかじめ含んでおく使い方もあります。これは、大切な論点にスポットライトを当てるような効果があり、かつ、大切な点を反復して聴衆の記憶に刷り込むことができます。
ひとつ注意すべきことは、あらかじめ原稿に含む場合、あまり何度も繰り返して使えないことです。スピーチやプレゼンでは、そもそも「要するに」と言わずして端的に語ることが求められていますから、何回も"in short"と切り出すことは、自分から「端的に語り切れていません」と認めることにつながるからです。
「要するに」を使う効果的な場所は、最も「聴衆に覚えてほしい主張」を語るタイミングです。説得型スピーチであれば、問題の本質に迫る部分。商品説明のプレゼンであれば、新商品が解決する「売り」の部分で使います。そうすることで、「ひと言でいえば何なのか」が明確になり、聴衆の記憶に残ります。
話者は、多くのことを語りがちです。そんなとき、話し過ぎを戒めて、語りの論点をフォーカスする"in short"のサインポスティング技術を、有効に使ってみてください。

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