説得の3要素「ロゴス・パトス・エトス」のバランスで英語スピーチに説得力を

それぞれの特徴を知り、配分を意識して説得力を高める。

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アリストテレスの時代から説得術の伝統的な3要素として定着する「ロゴス・パトス・エトス」。簡単な言葉で表現すれば「論理・感情・倫理」のバランスで、聴衆を説得するテクニックです。スピーチでもプレゼンでも、この3要素のバランスを意識することはとても大切なのですが、実際にはなかなかそこまで気がまわらないことも。この記事では、それぞれの要素の特徴と、今すぐ実践できる簡単な使い方をご紹介します!

ロゴス:数字と根拠で語る「論理立証」

説得の3要素の代表格ともいえる「ロゴス」(logos)とは「何らかの立証材料をもって説得の裏付けを図ること」です。近頃、エビデンス(証拠)という言葉をよく耳にしますが、何らかの証拠や根拠を明示することで論点の正当性を示し、ひいては聴衆の説得につなげるわけです。

ロゴスを生かして説得力を高める簡単な方法は「数字を入れること」。調査データや統計結果など、数値で表現することで論点に明確な輪郭を与えることができます。数字については、過去記事「数字を入れてスピーチの解像度を上げる」にもありますので参照してください。

論証材料が数字で表現できない場合には、根拠となる「事実」を正確に引用します。過去に起きた事件や事故を紹介してその背後にある問題点を訴えたり、ことわざや有名な言葉を引用してそれに関連する主張を述べます。要は「○○だからこそ✕✕だ」というロジックを成立させるのです。

つまり「ロゴス」とは、説得しようとするメッセージの裏付けを明確に示すことで、論理的に聴衆を納得させようという試みです。いわば説得術の基本中の基本のテクニック。「説得あるところにロゴスあり」です。

パトス:物語で心に訴える「感情立証」

人間は感情の生き物だと言われますが、まさに「パトス」(pathos)による説得とは「人の感情を揺さぶり、共感から納得へと導くこと」です。ロゴスを「頭による理解」だとすれば、パトスは「心による共感」。ロゴスとパトスは表裏一体となって、聴衆の「納得感」を構成しています。

パトスの力を借りて説得するシンプルな方法は「逸話を語ること」。人は理屈だけでは動きません。「だって好きだもん」「何となくイヤだもん」という直感的な感情で説得されることもあるからです。

たとえば「歩きスマホによる交通事故の危険性」を訴える場合、ロゴスによるアプローチなら事故数の増加傾向や若年化といった数字をあげるでしょう。一方のパトスでは、ひとりの犠牲者の後悔の言葉を紹介したり、一緒に歩いていた友人の気持ちを代弁したりしながら、その怖さや辛さを「聴衆の心に訴えかける」手法をとります。

事故の危険性が数値的に増加していても、それでも聴衆は「まぁ私は大丈夫だろう」と思っています。そこに「感情の揺さぶり」をかけて、聴衆の目を覚まさせようというわけです。ロゴスでのアプローチだけでなく、パトスとの合わせ技で聴衆を説得できる可能性を常に考えてみてください。

エトス:この人が言うなら、と思わせる「倫理立証」

3つ目の要素「エトス」(ethos)は「倫理立証」という名の通り、「話者そのものが持つ説得力によって、聴衆の心を動かすこと」です。いわば、ロゴスやパトスで説得を試みる以前のレベルで、その人の「存在感」によって、説得のための基礎的土台を成すものです。

エトスによって説得力を高めるには、「その話題を話すに相応しい人物になること」です。「あの人が言うんだからそうなんだろう」「あの人の言葉なら間違いない」という漠然とした納得を生むのがエトスの力です。

SDGsの観点からクールビズを推進するプレゼンで、話者がスーツに上着着用、おまけにネクタイを締めて汗を拭きながら発表していたら、それはもうコントの世界です。何かを訴えるには、それを訴えるにふさわしい人物であることが求められるのです。

社会や業界のカリスマ、インフルエンサー、テレビに登場する学者や専門家など、いわゆる話者の「肩書き」も、説得力に影響を与えます。不人気だった商品が、有名YouTuberの「最高!」という一言で品切れになるなど、エトスの力はマーケティングや世論形成にも影響を与えます。このように、話者の権威性や信頼性といった「総合的な存在感」がエトスとなり、聴衆を動かす大きな力になるわけです。

時折「ロゴス・パトス・エトス」のバランスを振り返る

誰かを説得するために発表するスピーチやプレゼンテーションでは、時に「ロゴス・パトス・エトス」のバランスに偏りがないかを確認することが大切です。それ以前に、原稿作成の段階で、これらのバランスを意識しておくことも必要です。

ロゴスが強すぎるスピーチは、端的にいえば「理屈っぽい」プレゼンになります。パトスが強すぎると「漠然とした感情論」という印象を与えます。さらに、原稿全体から生み出される「文体や論調」から、そのテーマに相応しい「エトス」が感じられないと、どこか「嘘くさい」仕上がりになります。

次のスピーチやプレゼンの作成にあたっては、「ロゴス・パトス・エトス」の3つの要素を意識して臨みましょう。そして本番では、堂々とした存在感で十分にエトスを高めてください。この3要素を応用してアリストテレスの力を借り、説得力を飛躍させてください!

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