英語スピーチのイントロ(導入部分)を印象的に工夫するほどに逆効果のリスク
出だしをユニークに目立たせるだけで説得力は向上しない

スピーチの教科書には「イントロは印象的に」といった助言があります。難しい質問をしたり恐怖で揺さぶったり、いくらイントロを「効果的」に演出する工夫をしても、それだけで最後まで聴衆の注目や関心を引きつけて「説得」まで行きつくかは疑問が残ります。シンプルで簡単なイントロもまた、スピーチの王道であることを理解しましょう。
「どう見せるか」より「何を見せるか」の方が大切
英語スピーチの出だし(introduction)に力を入れて工夫をすることは素晴らしいことです。しかし、スピーチコンテストの審査員をしていると、冒頭の演出がすぎるあまり、そのスピーチの「本質的な価値」を弱めてしまっていると感じることがよくあります。
スピーチやプレゼンの教科書や、ネット上の解説では、「イントロは特に大切なのでしっかり考えましょう」と呼び掛ける論調を見かけます。もちろんそれは間違いではありませんが、演出方法よりも大切なのは、スピーチで最も重要な「本文」(body)で何を言うかです。
あれこれイントロの演出や脚色で悩むくらいなら、普通に挨拶をして、普通に話し始めるほうがよっぽど効果的なことも多いのです。「過ぎたるは及ばざるがごとし」と言いますが、過度な工夫によって、本題が見えにくくなる、あるいは本題よりも目立ってしまう、そんな状況は避けましょう。
聴衆は普通の人間。普通に話しかければそれで十分。
iPhoneの生みの親であるスティーブ・ジョブズ(Steven P. Jobs)は、プレゼンが極めて巧みであることで知られています。そんな彼の話し方は、至って"普通"。何も飾らず、自分のリビングから友達に話しかけるようなリラックスした空気のプレゼンが彼の特徴です。そして、その「普通さ」を、徹底した練習で磨き上げるのも、ジョブズの素晴らしい姿勢といえます。
慣れない外国語でスピーチやプレゼンをするとなると、「何か特別なこと」をしなければならないとか、珍しい工夫をしないと聴衆が振り向いてくれない、と考える人が多いですが、多くの場合、そんな必要はありません。
むしろ、「何か面白いことをしなくちゃ」と考える人が多くなるほど、皮肉なことに「普通であること」の価値が高まります。これはまさに、スピーチやプレゼンテーションにおける逆張りの発想です。過去記事で何度も説明してきた「スピーチマインド」的アプローチだともいえます。
話者から「爪痕を残されたい」と願う聴衆はいない
聴衆や審査員は、あなたの特殊なパフォーマンスを期待しているわけではありません。「この機会に爪痕を残そう」と力むスピーカーもいますが、聴衆が「爪痕を残されたい」と願うことはないでしょう。聴き手が求めているのは、もっとシンプルなオープニングです。
「普通に、誠実に、分かりやすく。」効果的なイントロは、結局のところ優れたスピーチの「本質」に回帰します。聴衆を温かく包み込むような人間味が感じられる導入は、決して「平凡で退屈」なものではありません。
「イントロをどうやって印象的にしようか」と考えた時に、ぜひ「普通であること」の基本を思い返してください。きっと、穏やかで理解しやすい導入になることと思います。
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