舞台演劇の転換や暗転をスピーチやプレゼンの演出に応用する間(ま)の技術
ストーリーの切り替わりには間(ま)の静けさを埋め込む

舞台演劇で場面が変わる時、様々な方法で場を転換します。ストーリーの変化が際立つ瞬間でもあります。スピーチやプレゼンでは照明や舞台装置を使った転換はできませんが、スピーカーが語りの間(ま)や表情・姿勢をコントロールすることで、話題の転換を印象づけることができます。
舞台演劇の暗転を間(ま)で表現してみる
舞台演劇で用いられる「暗転」は、場面を切り替える手法のひとつです。一旦ステージの照明を落とし、次に照明が戻った際には別のストーリーが動く仕組みです。スピーチでは物理的な「暗転」はできませんが、話題が大きく転換する際に、聴衆が認識できるほどの「間(ま)」を置くことで、似た演出が可能です。
スピーチの舞台に立つと誰でも緊張します。この緊張は、予想以上に「間(ま)」を詰めてしまいます。ひとつの段落でストーリーが終わり、新しい話題が始まるときには十分な間を空けるのが基本ですが、緊張もあって話者本人が思うよりも間は短くなりがちです。だからこそ、転換を狙い際には長めの間(ま)をおいて、「舞台転換の緊張感」を聴衆に与えてください。
さらにこの応用をお話しましょう。舞台照明の「暗転技術」には、フェードアウトとカットアウトという2種類があります。前者は照明を次第に暗くすること。後者は急に照明を真っ暗にすることです。実はこれらのテクニックも、スピーチの転換技術に応用することが可能です。
自然な転換をもたらす「照明のフェードアウト」をスピーチに応用するには、間(ま)に入る前に、少し話すスピードを遅くしたり、語りを優しくします。また、急激な感情の変化を演出する「照明のカットアウト」をスピーチで表現するには、熱く語り続けるスピードを変えず、音量もそのままでいきなり「間(ま)」に入ります。少し難しい応用ですが、どちらも挑戦してみる価値のあるデリバリー(表現技法)です。
ボディランゲージとの連動でさらに効果的に
しっかりと間を置くことによる「転換」に慣れてきたら、ぜひボディランゲージとの連動に挑戦してみてください。間をとったあとに、今までと違う表情に変えてみる。間があけた瞬間に、上体を違う方向を向けてみる。これらはいずれも、単なる「間(ま)の緊張感」を印象的な演出へと高めてくれます。
これらのテクニックは、いずれも「やりすぎ」には注意しましょう。異常なほどの間を空ければ「単に暗唱が途絶えたのか」と思われますし、間(ま)とともに、ロボットのように体の向きやジェスチャーが変化したのでは、あまりに不自然で滑稽です。
舞台転換の技術をスピーチに応用するには、まず間(ま)を使いこなしましょう。そのうえで、間(ま)の入り方や、その際のボディランゲージの連動など、すこしずつ変化を与えてみるのが良い練習になります。「不慣れだな」と思う人こそ、ぜひ挑戦してみてください。
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