【一点突破】いってんとっぱ
1点に集中すればスピーチは強くなる

マンガ好きな人なら誰でも知っている“集中線”。読み手の注意を1点に集中させる技法です。これと同じやり方で、スピーチやプレゼンテーションを際立たせる方法があります。それが「一点突破」です。
これだけは、これだけは、で絞り込む。
スピーチやプレゼンは、基本的にその情報量は少ないほうが優れています。なぜなら、聴衆はそこまで集中して話を聞かないからです。話す側は「たくさん話したい」。聴く側は「手早く終わってほしい」。あなたが主賓やアイドルでない限り、このギャップを受け入れるのはスピーカーの宿命です。
集中して聞いてもらえないという前提に立てば、覚えてもらう工夫が必要なことに気付きます。そこで一点突破。10個、触れたい話題があったとしても、1つに絞る。1つに絞ってその話に関連するトピックで話を膨らませるのが基本的な考え方です。
自己紹介をする場面を考えましょう。出身地や趣味・嗜好、家族やペット、学生時代の話など、自分自身を表現する話題はたくさんあります。最も退屈なスピーチをするには、与えられた時間いっぱいに、次々と自分に関する話題を持ち出します。それでも一応は自己紹介なのですが、おそらく聴衆には何も覚えてもらえません。よくしゃべる人、という印象が残る程度でしょうか。
スピーチにおける1点突破とは、「これだけは聴衆に覚えて帰ってほしい」という項目に絞ることです。たとえばそれが愛犬に関してであれば、(自分の名前を紹介したあとで)心から楽しそうな表情で愛犬に関する話題を2つか3つ紹介すれば、1~2分は過ぎるでしょう。
犬の話しかできなかったと不安になるかもしれませんが、聴衆には「楽しそうに犬の話をしてた人」という明るい印象が残ります。そのうえで聴衆があなたに関心があれば、その後いくらでも個人的に自分を紹介をする機会はあるはずです。
他の話題を捨てる勇気でシンプルに
スピーカーは、たくさん話すほど安心する傾向があります。多くの話題を持ち出せば「何か聴衆の興味にヒットするだろう」と考えがちだからです。ところが実際には、たくさん話せばすべて忘れられるだけ。ひとつでも話を覚えてもらうためには、そもそもひとつの話題に絞る必要があります。
一点突破のために「他の話題を捨てる勇気」を持つことは、引き換えにあなたの話をシンプルにします。この考え方は、スピーチ全体の構成やプレゼンテーションのスライドデザインにも良い影響を与えます。スピーチやプレゼンを通じてどこに「集中線」を向けたいのか。それを意識することが、シンプルで強いメッセージを伝える第一歩です。
マンガの作画では、集中線は「迫りくるスピード感」を描く時にも活用されるとか。集中から生まれるスピード感は、スピーチやプレゼンテーションにも通じますね。