【 レコードプレーヤー 】音楽前のアナログなノイズから学ぶスピーチの趣
「シャー、パチパチ」から始まる期待感を感じるスピーチを

デジタル全盛の現代において、アナログレコードには今も根強いファンがいるそうです。今の学生は、もうレコードの現物に触れたことがない世代。音楽が「シャー、パチパチ」というノイズから始まるのが当たり前だった時代に思いを馳せて、スピーチの趣を考え直してみましょう。
音楽がいきなり始まらないスローなアナログ時代
アナログレコードからCD (Compact Disc)を経て、MP3等による音楽配信が一般的になった現代では「音楽はいきなり始まるもの」という感覚が当たり前になりました。ボタン操作ひとつで、パッパッと曲の頭出しができ、ノイズのかけらも感じないうちに、いきなり音楽が始まります。
アナログレコードではそうはいきません。レコードに合わせてターンテーブルの回転数を切り替え、レコードの表面をクリーナーでキレイにしてから、針をレコードに降ろします。そして「シャー、パチパチ」というスクラッチノイズがしばらく聞こえてから、ようやく1曲目が鳴り出します。
この一連のアナログのプロセスには、ひとつ一つに独特の趣があります。当時は「邪魔だなぁ」とさえ感じた音楽前のノイズも、今ではそれがアナログ時代の趣であったと懐かしく振り返れるほどです。
アナログレコードのノイズとスピーチの趣
このアナログレコードの特徴を、舞台でのスピーチにあてはめてみると、よく似た趣が感じられます。ステージにのぼって演台の前に立つまでの数秒間は、レコードのノイズ。不要なように見えて、実は大切な時間です。この静かな時間があるからこそ、これから始まるスピーチへの期待感が高まるともいえます。
今の学生はデジタル世代真っ只中を生きています。効率を最優先するデジタル世代ゆえ、この「アナログノイズの趣」つまり「静かな間」の大切さを表現しきれていないように感じます。舞台をスタスタと歩き、演台に着いたらパッと話し始める。この挙動は、まさにデジタル音楽プレーヤーのようです。
スピーチコンテストの審査員をしていると、舞台を歩く姿や、演台で聴衆と向き合った瞬間の表情に、そのスピーカーが過ごしてきた青春を感じます。努力や苦労、楽しさや喜び。スピーチとは直接関係のない「アナログノイズ」がそこにあります。
振り返れば、過去記事にある「発表前と発表後の余裕を演出するのは たった2秒の習慣」や「コンテスト本番の緊張を乗り越える 表情のホームポジション」は、いわば「アナログ的スピーチの趣」をお勧めする記事になっています。
スピーチの前の「アナログノイズ」は、音としては聞こえませんが、聴衆にはあなたのすべての動きや表情がよく見えています。デジタル時代だからこそ、ゆったりとしたアナログ的な趣を、スピーチ前の「静かな間」において表現してみてはいかがでしょうか?
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