【 らしさ 】守るべき「らしさ」と「似合い性」で自分らしい言葉を試着する
自分に似合った言葉かどうかを「試着」する感覚で

「~らしさ」という言葉は、相応しさのお手本という意味を含みます。「高校生らしさ」や「大学生らしさ」という期待値に応えることで、聞き手は一定の安心感を覚えます。とりわけ、生成型AI(人工知能)全盛の現代においては、意図せず「らしさ」を失うこともあり、「自分らしさ」の大切さが見直されるべき時代にあります。原稿の言葉が自分に似合っているかを「試着」する習慣をつけましょう。
「らしさ」は「ふさわしさ/似合い性」の指標
「らしさ」にあてはまる英語は"suitability" [似合い性]です。ちょうど新しい洋服を買う時に「自分に似合うかな?」「サイズ感はどうかな?」と考えるように、自分自身にふさわしく「似合っている」言葉選びや雰囲気づくりができなければ、「その人らしい」スピーチにはなりません。
「高校生らしいスピーチだった」と評されるスピーチには、おそらく「若者として新鮮な観察と表現」が感じられたはずです。同様に、「大学生らしい現状分析が良かった」という場合、大学生には一定の成熟さが求められていることの裏返しでもあります。これらは「試着」の成功例だといえるでしょう。
この「らしさ」は、そのスピーチをするうえで「話者に求められているふさわしさ」を満たすための指標になります。特に、コンテストで発表するためのスピーチやプレゼンテーションを考える際、その話者にふさわしい語りを意識して言葉を吟味する「試着」がとても重要になります。
発表原稿に並ぶ表現は「自分らしい言葉」か?
「話者に求められているふさわしさ」を意識する姿勢は、実は、話者に欠かせない「聴衆分析」(audience analysis)の一環です。まず相手に求められている期待に応えるということは、その期待を上回る成果を残すための土台になります。
高校生であれば、自分の経験と知識をふまえ、社会を見つめて等身大の解決策を出せば、一定の「らしさ」は満たされます。
大学生であれば、高校生よりも数年多い経験と教養があるわけですから、大人としての客観性や批判的思考力がうかがえるのが理想でしょう。
つまり、無理な背伸びをする必要はなく、自分自身の等身大の観察や言葉遣いが、結局は「その人らしさ」を輝かせることになります。無理に難しい言葉を使ったり、複雑な論旨を構築する必要はなく、「あなたならどう語るか」が、最終的な評価を左右します。
生成AIに頼るときこそ「らしさ」を試着
しかしながら、最近その「らしさ」が乱れるスピーチが増えてきました。あくまでも個人的な観測ですが、その一つの原因は生成AI(人工知能)にあるように感じられます。
高校生なのに借り物のように大人びた表現が登場したり、大学生でも明らかに使い慣れていない単語を連発したり。要は、自分の言葉を自分自身が十分に扱えていないスピーチが増えているのです。これは、全国規模のスピーチコンテストにおいて、近年顕著に感じられる傾向です。気をつけましょう。
一方で、「らしさ」が無理のない範囲で破られるとき、聴衆に新鮮な驚きを演出することもあります。かつて私が全国大会の審査員を担当した際、「中学生・高校生の部」で中学生が発表したスピーチがまさにその好例です。少し紹介しましょう。
その中学生は、自分が慣れ親しんだ近所がシャッター街になっているのを見て、自分が大好きな地元の将来を憂うスピーチをしました。中学生の日常的視点から、少し背伸びをして堂々と「経済」を語る。その姿に皆が感銘を受けたのです。その結果、多くの高校生スピーカーがいる中で、その中学生は堂々の優勝を収めました。
原稿の完成前に、もう一度「らしさ」が宿っているかを確認してみてください。これが言葉の「試着」です。その一つの判断基準は、「自分が普段使う言葉で、自然に語れているか」です。気慣れた普段着、つまり「無理のない言葉と論旨」で、自分らしい、自分にしか発表できないスピーチを披露してください。
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