論文|"Award-Winning Pair Presentations Reexamined"
日本国際情報学会編『国際情報研究』第21号|2024年12月

優れたペア・プレゼンテーションを構成する3ブロック構造は「起-転-結」。先行研究(Shimizu, 2023)が提示した「起-転-結の3ブロック構造」に関し、新たな研究サンプルを追加して再検証を試みた研究論文が、日本国際情報学会 学会誌『国際情報研究』第21号(2024年12月発行)に掲載されました。
▶ [DOI] https://doi.org/10.11424/gscs.21.1_64
起-転-結の分割点を数値的に定義し話題転換の誘発点(Trigger)を正確に特定
新たに公刊された論文"Award-Winning Pair Presentations Reexamined" [受賞ペア・プレゼンテーションの再検証] (Shimizu, 2024)は、ペアによるプレゼテーションに特有の3ブロック構造の特徴を再定義したものです。自身の先行研究(Shimizu, 2023)の主張を再検証するとともに、そこで例示された3ブロック構造の「分割点」に数値的定義を与え、それが有効に機能することを示しました。
先行研究の基本的な研究デザインは、「英文毎日杯・森田杯 ペアで紹介する 日本文化英語プレゼンコンテスト」(京都外国語大学 外国語学部 英米語学科 主催)において、当研究室所属の学生が獲得した優勝(2021年)・準優勝(2018年)・3位(2022年)の受賞原稿3本(約3,600語)を、言語統計分析および時系列分析によって考察するものです。さらに今回の論文では、同コンテストで2023年に優勝を収めた最新原稿(約1,100語)を分析サンプルに追加し、先行研究の有効性が再確認されました。
本研究により、「起-転-結」の分割点と、(中央の「転」ブロックに表出する)話題転換の誘発点(Trigger)に数値的な定義が与えられました。これにより、ペア・プレゼンテーションに特有の「起-転-結」の構造的特徴を、正確に描写・考察することが可能となりました。
「リアルな会話調」と「起-転-結」構造があってこそ本物のペア・プレゼン
本論文での研究成果を教育に応用すれば、制作中のペア・プレゼンが「起-転-結」の3ブロック構造を有しているかの検証が可能になります。また、中盤の「転」ブロックにおける話題転換の誘発点(Trigger)を戦略的に設計できることから、従来型のペア・プレゼンテーションとの顕著な差異化が期待されます。
学習者目線で本研究を読み解けば、二人が機械的に役割交代する従来型のプレゼンでは、理想的なペア・プレゼンテーションにはならないということです。段落ごとに話者が交代しても会話調にはなりませんし、起-転-結の3ブロック構造も再現されません。この点は、ペアによるプレゼンで留意すべき点だと本論文では明確に指摘されています。
本研究室においては、研究と教育が常に連携しています。学生のグローバルな活躍を支えるプレゼンテーション教育は、こうした研究に裏付けられています。
論文要旨 (転載)
本研究は、英語による「優れたペア・プレゼンテーションの構成要素」を考察した先行研究(Shimizu, 2023)について、新たな研究素材を追加して同研究の合理性を再検証するものである。先行研究では、ペア・プレゼンテーションの全国大会で優勝・準優勝・3位を受賞した発表原稿3本(各10分間)を研究素材にとりあげた。言語統計分析を経て「優れた単独スピーチの構成要素」を分析した研究結果(Shimizu, 2020)との比較考察等により、ペアでのプレゼンに特有の構成要素として、(1)話者2名の「自然な会話形式」に基づく物語調の構成と、(2)話者2名の発話量の時系列分析が「起・転・結の構造」を示すことが提示された。本研究では、直近の同大会で優勝を収めた発表原稿1本(10分間)を新たな研究素材とし、先行研究に準拠した手法で分析した結果、上記の(1)(2)ともに先行研究の主張が支持された。特に、1文あたりの語数(WPS)は最小値の6.98で偏差も小さく、また1セッション(発話機会)あたりの平均語数も最小値の17.59であることから、顕著かつ自然な会話形式が認められた。また先行研究で示された「起・転・結の3ブロック構造」は、視覚的には異なる形でありながらも、中間部で話題転換を促す「誘発点」とともに、先行研究を支持する形で再現された。同結果をふまえ本研究では、より明確な研究分析を期すため、3ブロック構造を成す転換点と誘発点の具体的な判定基準を定義した。
Keywords: Pair presentation contest, Speech communication, Storytelling, Time series analysis, Colloquial nature
▶ Shimizu, T. (2020). A statistical analysis of award-winning speeches. Mukogawa Literary Review, 57(1), 29-53. [リンク]
▶ Shimizu, T. (2023). Award-winning pair presentations explored: A statistical view, Kokusai Joho Kenkyu [The Journal of the Japanese Society for Global Social and Cultural Studies], 20(1), 66-77. [リンク]
▶ Shimizu, T. (2024). Award-winning pair presentations reexamined, Kokusai Joho Kenkyu [The Journal of the Japanese Society for Global Social and Cultural Studies], 21(1), 64-75. [リンク]