予選音声の録音はスマホの存在を忘れて
2メートル先の友人に話しかけるように録音しよう

弁論大会の予選応募に欠かせない音声ファイル。スピーチコンテストの審査員を担当していると、とてもユニークな音声を耳にします。音声予選で不利にならないための録音方法を考えてみましょう。
耳元で囁き続けられると審査員には悩ましい
残念な音声ファイルの代表格が「マイクに向かって喋る人」です。とにかく一文字一句正確に録音したい気持ちは理解できますが、録音マイクに至近距離で話しかけると、その音声は審査員の耳を直撃します。
大音量なら慌ててボリュームを下げますし、逆に小声でボソボソと話されると、審査員は見知らぬ人にずっと耳元で囁き続けられることになります。これはなかなかツラいです。
スピーチコンテストの予選審査員のミッションは、高いポテンシャルのあるスピーカーを本選に送ることです。その目的に照らせば、あくまでも自然な語りが第一。耳に心地よいスピーチをスマホで録音するコツとして、次の4つのステップを紹介します。要は「録音用のスマホが目の前にあることは忘れて」というアドバイスです。
予選用音声録音のポイント
- (1) 録音に適した静かな場所を探す。
- (2) テーブルの上にスマホを置いて録音する。
- (3) 目の前のスマホを無視して前を向く。
- (4) 2メートル向こうの人に話しかける。
環境要因で不利になることは全力で避ける
全国大会の予選審査員には、毎回数十本もの音声ファイルが届きます。どれも名作なのですが、録音コンディションが悪いとスピーカーの能力を十分に伝えきれません。録音環境が悪いだけで落選になることはありませんが、有利になることもまずありません。
特に雑音には注意が必要です。最初から賑やかなカフェや学生ホールで録音するのは感心しません。周辺の環境音は想像以上に聞き取れてしまうもの。スピーチ以外の余計な音はすべてコミュニケーション上の雑音(noise)となって、審査の邪魔をします。
逆に静かなカラオケボックスであっても、わざわざカラオケ用のマイクを使い、ご丁寧にエコーまでかけて録音する人が(結構たくさん!)いますが、それも極めて不自然です。イケボを競う大会ではありません。カラオケボックスで録音するなら、他のお客さんの音が響かない時間帯に、上記の(1)~(4)を守って生声で録音してください。
結局ありのままの自分を記録するのがベスト
スピーチコンテストの審査員が期待するのは、その人の「飾らない人柄が感じられる語り」です。無理に感情を高ぶらせたり、朗読調の不自然な起伏を演出する必要はありません。終始誠実であることが大切なのは、予選も本選も同じです。
稀に、音声を編集しているケースに遭遇することがあります。各パラグラフごとのベストテイクを編集ソフトで繋いだり、音声加工で艶のある声にしてみたり。審査員は同時に何十本もの音声を聴いています。不自然な編集はすぐに気付きますし、大会によっては即、失格です。
結局のところ、優れた録音の条件は「静かな環境で自然な声」です。何度も録音しながら練習し、ベストテイクで勝負してください。いつか、皆さんのお声が聴けるのを楽しみにしています。その時は、ぜひ耳元で囁くのはご遠慮くださいね。