原稿確定の前に再生速度を調整して全体の尺(長さ)を強制的に変更してみる
ベストなスピードを試してから最終原稿を確定しよう

ようやく最終原稿が確定するその前に、必ず試してもらいたいのが練習動画の「再生速度」を変えて視聴してみることです。YouTubeでは、自由に再生速度を変更できますから、少し速め・遅めを試行して、本当に現在の語数で原稿を確定して良いかを確かめることが大切です。
現在の速度(=総語数)が最善であるかを疑ってみる
最終原稿の確定段階に入ると、現在のスピーキング速度(すなわち総語数)がベストであると思いがちです。しかし、強制的にスピーキング速度を変えたプレゼンを視聴してみることで、現在の語りが意外に遅かったり、あるいは速かったりすることに気付くことがあります。
練習の際、「厳密に今の1割増しのスピードで話す」というのは、極めて困難です。しかし、動画再生アプリであれば、詳細に再生スピードを調整することができますので、1.1倍(1割増)や、0.9倍(1割減)の速度を簡単に試してみることが可能です。
スマホやPCでそこまで詳細な速度調整が出来ない場合は、YouTubeに「限定公開モード」で練習動画をアップロードをすれば、YouTubeの再生画面で0.1倍刻みでの調整が可能になります。
強制的に、微妙に速度を調整した動画を視聴することで、案外「1割増しでも速くないね」「1割遅くした程度でちょうどいいんだ」ということに気付くものです。この気付きは、原稿だけを眺めていても決して得られない発見です。ぜひ試してみてください。
調整後の速度でオーバーラップをして語りを矯正
動画の速度調整により、「もう少し早く」「もう少し遅く」という理想的な速さが判明したら、今度はそれを実際の語りに落とし込む練習をします。そこで役立つのが「オーバーラッピング(overlapping)」です。
オーバーラッピングとは、テンポの遅れがないように、音声ファイルに合わせて原稿を見ながら一緒に語る練習方法です。つまり、今までの自分の語りのスピードを一旦忘れて、新しい速度に上書き矯正する練習になります。
仮に動画が8分ぴったりの場合、1.1倍の速度で再生した動画は「0.8分間短縮」されますので、約50秒の尺を圧縮できます。しかし、文章や段落の後に来る「間(ま)」は残しておく必要がある場合も多いので、実際には概ね30秒ほどの短縮になるのではないでしょうか。
「制限時間ぎりぎり」を回避するひとつの選択肢
コンテストで定められた時間制限ぎりぎりの原稿になっているような場合、通常であれば原稿(語数)をカットせざるをえません。しかし、1.1倍速での再生で「その方が自然な語りに聞こえる場合」には、原稿はカットせず、語りをテンポアップして対応することも選択肢に入ります。
ただし、過去記事「英語スピーチ原稿の単語の語尾が 滑る、消える、詰まる 原因と改善方法」で説明したとおり、語りの速度を上げると語尾の処理が荒くなることがあります。この点に留意できれば、総語数を減らすことなく、制限時間内にすべてを語り切ることが可能になります。
慣れ親しんだ「自分の語りのスピード」を強勢的に変更する試みは、なかなか面白い体験になるはずです。スピーチやプレゼン全体の「速度のムラ」に気付くこともできる貴重な練習方法ですので、ぜひお試しください。
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