スピーチ原稿が完成した後の「読み合わせ」で確認・指導すべき3つのこと
読み合わせをおろそかにすると後で皆が苦労します
※これは教員向け(教え方)の記事です。

スピーチやプレゼンの初稿が完成し、先生の添削指導が終わると、次に取り組むべき作業が「読み合わせ」です。ここで教員が確認すべきことは、発表者の音読を通じた「(1)尺[時間]・(2)語彙・(3)感情」のバランスです。この3つを適切さを確認せずそのままメモライ(暗記)に入ると、後々やり直しのリスクが高まります。
読み合わせの究極の目的は「原稿の適格性」の確認
原稿が完成し、教員の添削を終えたらいよいよ「読み合わせ」の指導に入ります。「読み合わせ」とは、文字の原稿を「音の原稿」に変えるための指導です。いわば、演劇などで演者が集まり、脚本を口頭で表現しあう稽古に似た作業だといえます。
スピーチやプレゼンテーションの原稿の「読み合わせ」は、単なる「音読指導」ではありません。これを適当にやり過ごしてしまうと、後々何度も原稿の改訂を繰り返すことになります。読み合わせにおいては、次の3点をひとつずつ丁寧に確認していくことが大切です。
- 尺[発表時間]が適切に収まるか
- 語彙に無理な表現が含まれていないか
- 感情をすべて適切に再現できるか
[1] 尺(発表時間)が適切に収まるか
発表原稿の確認作業において何より大切なのは「尺(発表時間)が収まるか」です。読み合わせにおいては、単なる「音読」ではなく、スピーチ本来の「語り」を入れて発表した場合でも、スムーズに所定の尺に原稿が収まるかを確認しなければなりません。
私の研究では、優れたスピーチの語数は1分あたり111語です。しかしこの数字は、それなりの経験値があるスピーカーであることが多いため、通常は1分あたり約100語で語数を確認すれば、大きく尺を超えることは基本的にはありません。
ただし、スピーチ原稿は単なる「音読練習用の原稿」ではありません。音読の上に機微な感情を乗せるため、通常よりも速度を落としたり、長めの間(ま)をあけたりと、そこには音読スピードが落ちる様々な要素があることを考慮しなければなりません。
単に原稿を「時間内に読めるかどうか」ではなく、適切な「語り」を乗せてもなお、所定の尺に無理なく収まるかどうかを確認し、必要があれば原稿をカットする旨の指導が必要です。
[2] 語彙に無理な表現が含まれていないか
スピーチ原稿を作成する過程においては、表現が単調にならないよう、多様な語彙を使うのが基本です。また、話者の感情を的確に表現できる単語を選択的に使用するため、時に、原稿には「音読しにくい」いわゆる難しい単語が並ぶことがよくあります。
読み合わせにおいては、原稿に登場するすべての単語を、話者が無理なく自然に発音できるかを丁寧に確認する必要があります。ここでの教員の役割は、「現時点で既に問題がないか」あるいは「今後確実に習得できるか」を見極めることです。
初見の時点で、原稿を完璧に語れるスピーカーはいません。ゆえに読み合わせにおいては「今後の伸びしろ」を考慮したうえで、発音に難のある単語を洗い出し、必要に応じてそれらを別の単語に置き換える、あるいはまったく別の表現で言い換えるなどの処置をとります。
スピーカー自身が苦手とする発音がある場合、もちろんそれを努力で克服させることが正統的教育ではあるのですが、スピーチの本番までは限られた時間しかありません。ですから、そもそも「語りやすい語彙に差し替えておく」という判断は、時に合理的かつ現実的な選択肢になります。
[3] 感情をすべて適切に再現できるか
スピーチやプレゼンには、全体の尺を通じて様々な感情の起伏が存在します。「存在する」というよりも、存在させるように設計する、という表現が適切かもしれません。読み合わせにおいては、これらの設計された感情の起伏を、話者が漏れなく口頭で再現できるかを確認しなければなりません。
話者によっては、余すところなく豊かに感情表現できる人もいれば、それが苦手な人もいます。いわゆる「発表の山場」を劇的に演出したくても、それがきちんと口頭で再現されない限り、デリバリー(発表技法)が持つパワーは存分に発揮されません。
ゆえに、読み合わせにおいて「どうもうまく語れない」あるいは「特定の感情が表現されない」という場所があれば、その箇所を改訂(変更)するように指導することには意味があります。
ただ、それは読み合わせの段階でうまく表現出来ていないだけで、今後練習すればできるようになるかもしれません。そのあたりの切り分けを判断し、適切に助言するのも教員の大切な役割になります。
上記3点の「読み合わせチェック」がすべて完了すれば、いよいよスピーカーはメモライ(原稿の暗記)に入ります。メモライが進んでから原稿を調整(改訂)するのは、話者自身にも負担ですし、教員にとっても不要な気を遣う場面が増えます。
ぜひ、将来のスムーズなスピーチ指導のためにも、「読み合わせ」というプロセスを大切にしてください。
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