スピーチやプレゼンで感情が言葉に乗らない学生には原点回帰で指導する

「全体→段落→文章→単語」の順に適切な感情を再確認する

※これは教員向け(教え方)の記事です。

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スピーチの音読指導が進み、全体的なデリバリー(表現技法)の指導に入っても、なかなか話者の感情が言葉に乗ってこない場合があります。教員としては、本番まで時間がなく気持ちも焦りますが、そんな時こそ原点回帰。現在の原稿に込められた「本当の思い」を再確認する指導が役に立ちます。

「そもそもの気持ち」を見直す、スピーチの原点回帰。

感情をうまく言葉に乗せることができる話者もいれば、話者本人は精いっぱい感情を乗せているつもりでも全くそう見えないスピーカーもいます。基礎的な音読指導を終えても、話者の感情表現に指導者が不足を感じる場合には、改めてスピーチの初心を振り返る指導を試みてください。

言葉に感情が乗らない原因は大きくわけて2つあります。1点目は、「英語で」感情表現をすることに慣れていないケース。2点目は「そもそもの感情」が十分に理解できていないケースです。さらに初学者の場合には、この両方が当てはまる場合もあり、指導では苦労するところです。

前者の「英語であるがゆえに感情表現がうまくいかない」場合には、同じ文章を、様々な違う感情で語ってみる練習をすることで、次第に「感情の語り分け」ができるようになってきます。いわば、これは意識的に感情をコントロールすることに慣れる練習です。

問題は、後者の「そもそもの感情」を話者自身が把握できていない場合です。その際には、「スピーチ全体→各段落→各文章→各単語」というように大きなブロックから次第に細分化しつつ、それぞれの「感情の変化や推移の状況」を学生とともに確認します。すなわち、スピーチの本質的テーマを見直す「原点回帰」の作業をするわけです。

「ここではどんな気持ち?」「喜怒哀楽で言うとどれ?」

「話者本人が自分の気持ちを理解できないはずはない」というのは正論です。しかし実際には、ひとつの原稿が仕上がった時には、既に様々な関係者の添削や改訂が加えられていて、(特に初学者には)その結果として手元にある原稿の内容と感情の結びつきを話者自身が十分に把握できていないことも多いのです。

それゆえに、まずはスピーチ全体を眺めつつ、「このスピーチで言いたいことは結局何だっけ?」「それを伝える時の自分はどんな気持ち?」といった質問を学生に投げかけながら、基礎的なレベルから「本来あるべき話者の感情」を呼び覚ましていく指導が必要になります。

スピーチ全体の次には、各段落について同じ作業をしていきます。それぞれの段落には「主要な感情」が存在するはずですから、「この段落を話しているときの気持ちは、喜怒哀楽でいうとどれ?」というように、段落ごとの主要かつ大まかな感情の変化を話者に把握させることが大切です。

ここまでで概ね、スピーカーは本来の感情を理解し、次第に語りに反映できるようになります。それでもまだうまくいかない場合には、さらに掘り下げて各文章単位や究極的には各単語単位で、同じように話者のあるべき感情を確認していきます。必要に応じてそれらをメモするなどして、きちんと理解させると良いでしょう。

AI時代だからこそ人間的な感情の変化を尊重する

これらの作業は相当に手間のかかる指導です。しかし、話者が「本来の感情」をしっかり獲得しないことにはデリバリーの指導に入れません。デリバリー指導に入り、学生が発表するたびに、感情が不明確だと教員が感じる場面があれば、上記の指導をやり直します。そうすることで、揺るぎのない力強いデリバリーが仕上がっていきます。

最近では、中学生や高校生でも生成AIを使って英語スピーチの原稿を作成をする時代です。そうなると、ますます「そもそもここの感情が分からない」という皮肉な現状に直面することが増えるでしょう。何となく理解できたようなフリをして発表するスピーカーと、心底から溢れ出る感情をぶつけるスピーカーとでは、その説得力の差は歴然です。

時には教員側から、「ここはもっと虚しさを表現してもいいんじゃない?」「ここでは、少し怒りをぶつけてみる?」などと助け船を出しながら、スピーカーとともに感情豊かなスピーチを作り上げてください。

学生の感情表現の難しさは、単に英語力の問題ではなく、スピーチそのもののメッセージの重みを把握することにあります。時には、原点回帰の大切さを忘れないようにしたいものです。


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