英語スピーチには、ツルツルより「ザラつきのあるテーマ」を選ぶ。
「つるつる」と「ざらざら」の質感の違いを意識しよう

説得型スピーチのテーマ選びで迷った時は、迷わず「ざらつき」のあるテーマを選ぶのが正解です。ザラつきのあるテーマとは、誰もが知る話ではなく「新しさや意外性がある話題」です。ザラザラした建物の外壁に少し触れただけで跡が残るように、ざらつきのあるテーマのスピーチは、一度聞くだけで多くの人に強い印象を残します。
テーマのザラつきは、話題の新鮮さのバロメーター。
まだ多くの人がとりあげていない新しいテーマは、素材の粒が立ち、いわば「ザラザラした」質感を持っています。一方、誰もが知る馴染みのテーマは、これまで多くのスピーカーに何度も何度も擦られてきた分だけ、素材感は「つるつる」です。英語スピーチで目指すべき質感は、間違いなく前者の「ザラつき」です。
たとえば「スマホ依存」を考えます。これは新しいテーマでしょうか。何十年という歴史から見れば比較的新しいテーマかもしれませんが、現代においては、既に多くのコンテストで語られ続けてきた、ツルツルした話題のひとつでしょう。
それがもし、時代が2007年、初代iPhoneが世に登場した時であったらどうでしょうか。前代未聞のデジタル機器が登場し、新しいデジタル社会の幕開けを祝う時代の真っただ中、「スマホ依存」をスピーチのテーマに選べば、それは劇的に斬新であり、視点も鋭く尖っていて、まさにザラつき抜群のテーマであったはずです。
それから20年近く経過した現代では、「スマホ依存」は一般的な社会現象として定着し、そのテーマは「つるつる」の状態に擦られているのがわかります。
ツルツル度合いを察知する「あぁ、アレね」
テーマのザラつきを計測する機器はありません。ゆえに、その素材感を正確に測ることはできませんが、スピーチのテーマが、既に「ツルツルな状態」であるかを察知する基準があります。それは、「あぁ、あの話ね」という直感的印象を与えるかどうかです。
誰かが「スマホ依存」がテーマのスピーチをするつもりだと友人に相談したとき、恐らくその友人は「あぁ、あの問題ね」という印象を持つでしょう。「あぁ、アレね」と思われた時点で、既にそのテーマは一定の先入観を伴った「ザラつきのない」話題となっている可能性が高いです。
誰かにテーマを相談したときの理想的な反応は、「へえ、どんなこと?」です。適度なザラつきがあるテーマは、そのテーマを話しただけで、しっかりとした関心が返ります。「聞いたことはあるけど、何を話すの?」というような返答も理想的だといえるでしょう。
このザラつきの程度は微妙で、逆にザラつきが強すぎると、「はぁ?何それ」になります。これは、テーマが新しすぎる、狭すぎる、あるいはターゲット層がズレているなどで、聴衆の理解が追い付かない状況です。これは、鋭すぎる質感の外壁のせいで、不本意に肌を傷つけるような「失敗」にも似ています。
ツルツルをザラザラに戻すには「視点を変える」
つるつるな素材感を持ってしまったテーマでも、それをザラザラに戻す方法があります。それは「視点を変える」ことです。
先ほどの「スマホ依存」でも、その根本的な問題をどこに置くかによって、一見ツルツルな素材にザラつきを蘇らせることができます。言い方を変えれば、スマホ依存というテーマの観察点を変えるということです。
ひとことに「子どものスマホ依存」といっても、次のように視点は様々です。
- スマホを、子供が使いすぎる。
- スマホを、大人が与えすぎている。
- スマホの使い方を、学校が教えていない。
- スマホより、楽しいことがない。
- スマホを使わないと、友人関係に問題が生じる。
- スマホを使わないと、勉強が不自由になる。
こうして「スマホ依存」の問題点を複眼的に整理してみれば、それぞれに対応した「問題点」や「解決策」も変化します。この観察によって今までにない新しい視点が得られれば、よくある「つるつるなテーマ」でも、新しさをもったテーマ変化させることもできます。
上記は「子どものスマホ依存」の例ですが、これを「大人のスマホ依存」「高齢者のスマホ依存」「業務中のスマホ依存」のように対象者を変えるだけで、さらに新しいバリエーションが生まれます。自分の興味のあるテーマが「ツルツル」だと感じたときには、ぜひ視点を変えて、ザラつきあるテーマに変化させましょう。
せっかくのスピーチです。強い印象を残すために、テーマはザラつきのあるものを選びましょう。そして、その問題を複眼的に眺めて、もっとも印象的な「視点」で語ることが大切です。ぜひ、あなたのユニークな視点で「ザラつき」のある、忘れられないスピーチを発表してください!