4分割用紙|多くのテーマ候補を説得型スピーチに落とし込む審査工程

「具体例と解決策」に現実味を持たせるための秘訣を探る

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良いスピーチは、テーマ選定で決まります。その秘訣が、この「4分割用紙」にあります。「8分割用紙」を使ってスピーチテーマの候補が揃ったら、次は「4分割用紙」を使ったテーマの絞り込みです。これは単に8つの候補を半分に絞る作業ではなく、各テーマに具体例と解決策が出せるかを検証する工程でもあります。ここで「話したいテーマ」と「スピーチとして成立するテーマ」が一致するかを確かめましょう。

4分割用紙の役割:話したいテーマから伝わるテーマへ

過去記事「8分割用紙|説得型スピーチに最適なテーマとは何かを議論する土台」では、テーマを検討するための基本的な考え方を説明しました。ここで紹介する「4分割用紙」は、8分割用紙で挙がったテーマから、「話者にも聴衆にも興味深い」テーマを4つに絞り、それぞれが説得型スピーチに適したテーマとなりうるかを検証するものです。

4分割用紙に記入する項目は次の4項目です。(1)題目(社会問題)(2)問題の概要(3)実際の事例(具体的に)、(4)解決策(問題解決のための提案)。このうち、最初の2つは「8分割用紙」と同じ項目です。以下に4分割用紙で初めて登場した項目について説明します。

まず「(3)実際の事例」には、先に記した「(2)問題の概要」の具体的な事例を書き込みます。概要だけでは全体像を把握できないので、それらが実際にどのような状況にあるのかを、データやニュース、統計や実際に発生した事例などを例示して論証します。これにより、「問題の概要」で述べられたことが、現に深刻な状況にあることを聴衆に訴えることができます。

次の「(4)解決策」には、「(1)題目」で挙げた問題を解決するための、具体的な提案を記入します。単なる理想論ではなく、聴衆一人ひとりが今日から実践できるような、具体的で実行可能な内容であることが重要です。たとえば「まずは〇〇をし、次に〇〇をする」のように、誰もが解決への取り組みを理解できるように書きましょう。

4分割用紙が埋まらない時、そのテーマは潔く諦める!

4分割用紙の記入例を考えてみましょう。8分割用紙の過去記事で例示したものと同じサンプルを検討してみます。

  • 題目:ごみ処分場の不足(8分割用紙と同じ)
    概要:増え続けるゴミを処分するための埋め立て地や焼却灰を処分する場所がなくなっていく。便利な使い捨て用品も増えていて、ゴミの量を増加させている。(8分割用紙と同じ)
    実際の事例:〇〇の調査によれば、全国の自治体の〇〇割が新たな埋め立て地の不足を指摘している。〇〇省の統計では、2010年から2020年の間に使い捨て用品の消費量が〇〇%増加している。
    解決策:使い捨て用品を購入する際には、本当に使い捨てでなければならないかを考える。使い捨て用品を選ぶ際には、埋め立て地を圧迫しないよう、焼却可能な商品を選ぶ。
  • 題目:SNSに振り回される若者(8分割用紙と同じ)
    概要:SNSで見聞きした情報をそのまま疑わずに受け入れると何が真実かを見失う。この問題の背景には人間関係の希薄さがあるのではないか。(8分割用紙と同じ)
    実際の事例:〇〇協会の調査によれば、SNSに書かれた内容をそのまま信じる人が〇〇割もいる。〇〇新聞の報道では、高校生・大学生の間では、人と対話をする時間よりもSNSと関わる時間の方が多い現実がある。
    解決策:一人ひとりがこの現実に向き合い、毎日の食事やお茶などで、友人と顔を合わせる時間を意識的に増やす。SNSでの話題を、友人や家族と対面で話をするなどして、SNSの画面上だけで完結しないようにすれば、リテラシーも上がるし、対話時間も増える。

「実際の事例」と「解決策」を考える際、どれだけ探しても、考えても、例が見当たらない時があります。そんな場合には、そのテーマを4分割から除外して、別のテーマに差し替える必要があります。

実際の事例は、説得型スピーチにおける論証には欠かせません。また、実行可能な解決策が見当たらない問題について、その解決を聴衆に訴えることはできません。つまりは、4分割の内容を検討すること自体が、そのテーマが説得型スピーチとして成立するかを検証するプロセスになっているのです。

ベストテーマを絞り込む4つのチェックポイント

それぞれの記入欄が埋まり、4分割用紙が完成したら、いよいよベストなテーマを絞り込みます。8分割から、その半分の4分割に絞り込んだように、まずは4つのテーマを2つに絞り込んでみましょう。その際のチェックポイントは次の通りです。

  1. 自分が心から訴えたいテーマか
    単にタイムリーで面白そうというだけでなく、自分が真に解決を訴えたい社会問題であるかどうか。自分自身が熱くなれない話題で、聴衆の気持ちを熱くすることはできません。
  2. 制限時間内で議論可能なテーマか
    大きすぎるテーマではなく、制限時間内でも明確な議論ができる問題か。どれだけ構成がしっかりしていても、4分間や8分間のスピーチで議論できる内容は限られます。
  3. 解決策が実効的で聴衆自身が取り組める内容か
    候補となっている「解決策」が実効的であり、かつ聴衆一人ひとりが日々取り組める内容となっているか。具体的かつ実現可能性があることが必要です。
  4. テーマが平凡すぎたり斬新すぎないか
    誰もが何度も耳にしたことのある平凡な話題ではなく、聴衆のほとんどが知らないような斬新な話題でもない、という条件を満たしているか。説得型スピーチのテーマは、新しすぎても古すぎても、聴衆の関心は低くなります。

これらを基準にテーマを2つに絞ったら、一週間ほど時間をおいて頭をリフレッシュしたのちに、最終的にひとつのテーマを決定します。最終候補を決める際には、過去記事「説得型スピーチ構造用紙|連続入賞を達成する基本的枠組み」で紹介した「構造用紙」の6項目を漏れなく埋められるかを確認してください。

8分割から4分割、そして構造用紙へと忠実に段階を追ってきたならば、そのテーマに自信を持って良いはずです。構造用紙を埋めていき、実際の原稿作成へと進めましょう。

説得型スピーチの成否は、実際の発表に至る以前の、この「テーマの選定」が極めて重要です。どれだけ発表が上手で、論旨の展開が巧みでも、テーマそのものが退屈であれば、そこには共感は生まれません。

時に頭が混乱する時もあるかと思いますが、ぜひコンテストの舞台や最終発表の教室で、自分自身が堂々とスピーチをしている姿を想像して、それぞれのプロセスを楽しんでください。どちらが良いテーマかが見えなくなったときは、自分で判断せず、先生や友人に相談し、実際に聴衆となる人々の意見を聞くことを忘れないでください。

スピーチ原稿を書き始めてからテーマの不適合に気付くと、また最初からやり直しになります。がんばって4分割用紙の作成プロセスを乗り越えた先には、きっと素晴らしいスピーチの舞台が待っています。自信を持って独自のスピーチと向き合ってください!


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