【 My Friends 】スピーチの一体感を演出しストーリーを強化・転換する呼びかけ

呼び掛けることで聴衆との距離を縮め、空気を引き締める。

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英語スピーチでは、聴衆のことを「私の友人たち」(my friends)と呼びかける習慣があります。厳密には聴衆は"友人"ではない場合が多いのですが、その気持ちを胸に聴衆に語り掛けることで、話の流れを印象的に引き立てたり、話題を転換することができます。

友達でもない聴衆に"my friends"と呼び掛ける違和感?

初めてスピーチで"my friends"という言葉を使うのは、どこか居心地の悪さを感じるのではないでしょうか。日本では、知らないひとを「友人たちよ」と呼び掛けることはありませんので、違和感を覚えても無理はありません。でも乗り越えるべきは異文化。"My friends,"という定番の呼びかけが持つ訴求力を使わない手はありません。

そもそも、"my friends"という呼びかけは、スピーチにおいて聴衆を「同じ目標を共有する仲間」と見なし、スピーチにおける一体感を演出する文化を反映しています。また、単なる儀礼的な呼びかけではなく、「熱意を共にする仲間」として、聴衆が話者に心を開いてもらうための「レトリック」(修辞術)であるともいえます。

使うべき場所は「ここぞという主張をする場所」や「エンディングへの切り替え」が一般的です。言い方を変えれば、"my friends"という呼びかけの後に、何らかの大切なメッセージを配置するということです。戦略的に使えば、スピーチの空気を変える重要な転換点を演出できます。

山場の演出には欠かせない"My friends, ~"の語り掛け

具体的な使い方を見てみましょう。"my friends"は、文頭にも、文中にも、文末にも入れることができます。たとえば、キング牧師(Martin Luther King, Jr.)の演説"I Have a Dream" [私には夢がある]では、スピーチ後半の感情の高ぶりに乗せて、次のように聴衆に呼びかけています。

I say to you today, my friends. And so even though we face the difficulties of today and tomorrow, I still have a dream.
私は今日、友人の皆さんに伝えたい。たとえ今日そして明日の困難に直面しようとも、私にはまだ夢がある。

Martin Luther King, Jr. (1963), I Have a Dream

こう説明をすると、「そんな大げさな表現は恥ずかしい」と躊躇するかもしれませんが、これは何ら誇張表現ではありません。スピーカーが聴衆に熱い思いを語る時、"my friends"は多くの場面で使われます。以下にスピーチで応用できそうなパターンのサンプルを紹介します。

  • My friends, it is time to take action.
    皆さん、今こそ行動を起こす時です。
  • I will tell you one more thing, my friends.
    皆さん、もうひとつお話します。
  • Without your support, my friends, this problem will not be solved.
    皆さんの支援なしには、この問題は解決しないのです。
  • Let me ask you, my friends, if not us, who will make a change?
    皆さん、私に尋ねさせてください。私たちでなければ、誰が変化を起こすというのでしょう。

ご覧のとおり、"my friends"が入る場所はとても柔軟です。文頭でも、文中でも、末尾でも構いません。「皆さん!」と呼びかけたくなる「気持ちが高ぶる場所」に挿入するのが最適です。

挿入する場所として特に効果的なのは、(1)問題を浮き彫りにするタイミングや、(2)解決策を提示する時、あるいは(3)結びの段落(conclusion)に切り替わる冒頭などです。それにより、スピーチの雰囲気に変化を与えられます。

"ladies and gentlemen" や "everyone"ではやや形式的に響くと感じられる際に、ぜひ"my friends"を試してみてください。聴衆との距離が少し縮まるのを感じられるはずです。当然ながら、聴衆をわざわざ"my friends"と呼ぶわけですから、"my friends"という表現がその場に相応しいかのTPOを見極めたうえで、文脈にふさわしい表情で語ることが大切です。ぜひ、使ってみてください。


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