説得型スピーチ構造用紙(3)|「恐怖と脅し」で聴き手の目を覚ます
明るい未来だけではダメ?最後の切り札は「恐怖感」

説得型スピーチをポジティブに締めくくるには、問題解決後の「明るい未来図」を語るのが効果的。しかし、それでも聴衆が関心を示してくれない時はどうしますか? そんなときには最後の手段。「脅し」が効きます。今、問題を解決しなければ、どんな恐ろしい未来が待ち受けているかを描写することで、聞き手の気持ちを揺り動かすことができます。
「明るい未来」と「恐怖の脅し」を使い分ける
これまでの記事で「説得型スピーチの構成要素」について解説をしてきました。その「説得型スピーチ構造用紙」の最下段にある「未来図」の右に、四角形で囲まれた"特別な余白"があります。実は、これが「脅し(恐怖)」です。
聴衆の心を動かすには、ポジティブな希望(明るい未来図)だけでは不十分な場合があります。そんな時こそ、人間が本能的に持っている「恐怖」の感情に訴えかけることで、会場の空気が引き締まり、驚くほど説得力を高めることができます。
説得型スピーチにおける「明るい未来図」というのは、いわば「馬の鼻先に人参をぶら下げる」という諺と似ています。言い換えれば、「この解決策を実行すれば『こんなにいい事』がありますよ」と聴衆の顔の前にニンジンをチラつかせるかのような説得法だといえます。
一方、どれだけ「未来のいいこと」を訴えても、心が動かない人がいます。そういう時には真逆のアプローチをとります。それが「聴衆に恐怖感を与えること」です。この「輝く未来」と「脅し」を使い分けるバランスが、スピーチ終盤の印象を大きく左右します。
脅しの具体例:勉強を[すれば/しなければ]どうなる?
具体的に考えてみましょう。たとえば「アルバイトばかりしないで、勉強しよう」という趣旨の説得型スピーチを考えてみます。
このスピーチの終盤を「明るい未来図」で語ると次のようになります。
- If you study harder, your brilliant grades will surely impress people at a company you wish to join in the future.
→ さらに熱心に勉強すれば、あなたの素晴らしい成績が、将来入社を希望する会社の人々に、間違いなく感銘を与えるでしょう。
つまり、勉強をするといいことがあるから勉強しよう、という理屈です。でも中には「就職先なんか別に興味ないし~」と言う人もいます。そういう人には、次のように「脅し」をかけるのです。
- Unless you study hard now, I'm so sorry that we will be missing you at our graduation ceremony next year.
→ 今しっかり勉強しておかないと、とても残念ながら、来年には、私たちの卒業式であなたの姿を見ることはないでしょう。
この言葉は、暗に「留年(卒業延期)」をチラつかせ、不勉強がもたらすリスクを描写し、聴衆を「脅し」で揺さぶっています。「仲間とともに卒業できない」という現実を言葉にすることで、聞き手の翻意を図る狙いが感じられるでしょう。
「明るさ」と「暗さ」、使い分けのポイント!
スピーチ終盤のメッセージは、その言葉が聴衆の耳に残り続けます。明るいイメージで、前向きに締めるのか。あるいは恐怖と脅しで、暗い緊張感を演出するのか。この選択はスピーカーにあります。
どちらを選ぶかはトピックによっても相性がありますし、せっかくスピーチに耳を傾けてくれた聴衆を「脅す」のは、どこか気が引けるはず。ですから、基本は「明るい未来図」でポジティブな空気を醸し出すことが大切です。そこで、時に恐怖の演出を「スパイス」として使う、というバランスが望ましいでしょう。
スピーチが終わったとき、聴衆が前向きな気持ちでいられるよう、言葉を選びながら「明るさ」と「暗さ」を使い分けてみてください。次にスピーチをするとき、聴衆に「希望の光」を見せますか?それとも、「暗い影」で心を揺さぶりますか? 恐怖のスパイスを使うことで、逆に明るい未来が引き立つこともありますよ。
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