【 エレベータースピーチ 】急にプレゼン時間が短縮されても慌てない練習法
どんなプレゼンでも「30秒に圧縮してみる練習」に意味がある

発表時間が急に短くなって焦った経験はありませんか?「エレベーター・スピーチ」(elevator speech)とは、どんなに時間が短縮されても、プレゼンの本質を失わずに情報を伝えきる技術のことです。エレベーターが目的階に到着するまでの数10秒間に、スピーチで最も伝えたいことを端的に言い切る。そんな練習に挑戦することで、本当に伝えるべき「メッセージの核心」が明確になり、自信をもって本番に臨めるようになります。
Elevator Speechは今日もどこかで起きている!
エレベーター・スピーチは別名「エレベーター・ピッチ」(elevator pitch)とも呼ばれ、自分が伝えたいことを極めて短時間で相手に伝える技術を指す言葉です。こう説明すると、どこか非日常的な訓練のように感じますが、実際には、エレベータースピーチは日々あちこちで見られる現象です。
たとえば「20分の発表時間だったのに、前の発表者の時間超過で自分の時間が短くなる」。あるいは「面談予定だった相手が急用で、わずかな時間の立ち話で済ませることになる」など。程度は違っても、自分の発表時間が大きく短縮されることは、ごく普通に起こりうるものです。
そんな時に必要なのは、「本当に大切なメッセージが何か」をしっかり理解しておくこと。20分での発表予定が15分になると知った時、慌てず堂々としていられるかどうかは、「自分のプレゼンの本質的価値を理解しているか」にかかっています。
「クォーター式練習法」でプレゼンの価値を確認
プレゼンを何度も練習して本番に備える人でも、発表時間が短くなる事態を想定して事前に訓練する人は多くありません。だからこそ取り組んでもらいたいのが、当研究室が名付けた「クォーター式練習法」(quarter practice)です。
これは、スピーチやプレゼンの発表時間を「クォーター」(quarter = 1/4)ずつ短縮して練習する方法です。たとえば予定される発表時間が20分の場合には、まず発表時間の1/4(すなわち5分)を減らした「15分間」で練習。それができたら次は10分間、その次に5分間、というように1/4ずつ発表時間を減らしていくのです。
最初の5分や10分の削減は、論証材料や具体例の削減、あるいは余談をカットするなどで対応できるでしょう。たとえば、新製品発表や研究発表であれば、20分バージョンでは「A, B, Cの3つの事例」で説明していたものを、短縮バージョンでは「最も重要なAの事例に絞る」といったパターンが考えられます。
しかし、それが「3クォーター(15分)の削減」となると、もはや小手先の圧縮では対応できません。根本的に「何が大切な情報か」を自分に問い直す必要がでてきます。先ほどの例でいえば、なぜ"Aの事例"が「今、大切なのか」だけに注力して説明するといった大幅な転換が求められます。
発表時間が「4分の1」にまで削られても、要点を端的に言い切れるとすれば、それはプレゼンの「真の価値」を発表者自身が十分に理解できているという証です。そうなれば、1分しか時間がなくても、それが仮に30秒になっても「要するに何が大切か」を自信をもって伝えることができるはずです。そこに「エレベーター・スピーチ」を練習する価値があるのです。
「要するに何なのか」を自分に問いかける習慣
エレベータースピーチを練習にとりいれれば、「要するに自分は何が言いたいのか」を常に自分に問いかける習慣が身につきます。「要するに何が言いたいのか」が明確になるということは、話者の自信になるだけでなく、聴衆にとってもありがたい配慮になります。
クォーター式で時間圧縮の練習をし、そのうえで「1分間」「30秒」のエレベータースピーチを練習してみてください。その練習で得た自信は、発表者の「エトス」(人間的説得力)を高め、存在感を際立たせてくれるはずです。
プレゼンの発表会場に向かうとき、エレベーターに乗る機会があれば、ぜひ練習の成果を振り返ってみてください。本番での成功を祈ります!
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