英語弁論大会の聴衆は誰か?目の前の人とその先の民衆を考慮するバランス
目の前の聴衆を基本とした上で、その先へと対象を拡げる。

スピーチやプレゼンにおいて、聴衆の設定で困ったことはありませんか? 授業課題の発表や企業の商品紹介など、聴衆がそのままメインターゲットである時は特に問題にはなりません。しかし不特定多数のお客さまを聴衆に迎えるコンテストとなると、話の対象者を誰に設定するかはとても悩ましい問題になります。すべての聴衆を巻き込む「聴衆設定」のコツを考えてみましょう。
目の前の聴衆に語りかけるのが成功への第一歩
まず話者が「話の対象」として第一に意識すべきは、目の前の聴衆です。もし、会場で実際に発表に耳を傾けてくれる人を対象にできないスピーチは、そもそもテーマにズレが生じている可能性があります。これは、スピーチのテーマを考えるうえで最初に行うべき「聴衆分析」(audience analysis)に基づいています。
聴衆分析とは、実際にそのスピーチを聞く聴衆がどんな人かを考え、配慮することです。学内大会であれば、聴衆はほぼ学内の生徒や学生です。全国規模の大会であれば、そこに若干の一般人が含まれるでしょう。そう考えると、自分と同じ立場の学生目線をスピーチのどこかで意識することが大切だということがわかります。
「目の前の人々が聴衆」というのは誰もが当然に感じると思われるかもしれませんが、実は違います。実際に英語スピーチコンテストの審査員をしていると、目の前の聴衆を飛び越えて、その先にいる一般大衆や特定の社会グループに向けたメッセージを語るスピーカーに出会うことは珍しくありません。
そうなると、貴重な時間を割いて発表を聞いてくれている聴衆は当事者意識を失い、話者と聴衆との一体感が薄れます。まずは、目の前の人々が聴衆です。そこから他者への呼びかけへと転換するのが安全です。
広く社会に訴える際は、目の前の学生にも呼びかける。
逆算的に言えば、そもそも、フロアにいる聴衆に語り掛けることのできる「テーマ」を選ぶ、という考え方が大切です。もちろん、すべてを学生向けに話す必要はありません。ただ、「目の前の実際の聴衆」と響き合える部分のあるテーマである方が、聴衆との対話はスムーズになります。
たとえば教育問題について言及する時、目の前の聴衆を飛び越えて文部科学省や教育委員会を批判し、解決策を教育行政に訴えても、フロアの聴衆にしてみれば「そうだよね」で終わりです。
その代わりに、まずは目の前の聴衆に向かって「私たちが受けてきた教育は最善ではない」あるいは「我々の未来の子供たちの問題だ」のように呼びかければ、聴衆は当事者意識を持ってくれます。そのうえで、教育行政の批判や改善点の指摘をすればよいのです。
このことは、過去記事「政府に丸投げの説得型スピーチでは勝てない!審査員目線で解決策を考える」で紹介した論点に通じます。結局は、聴衆こそが「真の当事者」であると訴えるスピーチであるほうが、訴求力は鋭くなります。
目の前の聴衆を愛するからこそ訴えたいことがある、という熱意が大切です。ぜひ、フロアにいる聴衆を大切にして、強いメッセージを残してください。