学術論文|An Extensive Study on Characteristics of Business Speeches: A Corpus-Based Approach to Metaphors in Business

日本国際情報学会編『国際情報研究』第12号|2015年12月

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ビジネスリーダーの言葉における概念メタファ(比喩構造)の特徴について、合計60本のビジネススピーチを「メタファグラム分析」で検証した学術論文(査読付)が、日本国際情報学会 学会誌『国際情報研究』第12号(2015年12月発行)に掲載されました。本論文では、ビジネスリーダーの比喩表現を分析し、従来の「量的性質」と「分布的性質」だけでは測れない、「時系列的性質」の存在を立証しています。
▶ 論文DOI https://doi.org/10.11424/gscs.12.1_104

メタファグラムが明らかにする「第3の支配性」

本論文(Shimizu, 2015)の邦題は、「ビジネススピーチの特徴に関する広範的研究:ビジネス・メタファへのコーパス・アプローチ」。「2010年に発表された10本のビジネススピーチ」から導き出された先行研究(Shimizu, 2014)の結論は、メタファには量と分布だけでなく、時系列の山場という「第3の支配性」が存在するという事実でした。

そこでShimizu (2015)では、この研究成果を追検証するため、新たに50本のビジネススピーチを追加して、約12万語から成る独自の「ビジネススピーチコーパス」を構築。それらを先行研究と同様の「メタファグラム分析」(下段カコミ参照)の手法を用いて調査しました。

その結果、先行研究(Shimizu, 2014)が指摘した通り、ビジネスリーダーのスピーチには、量的支配性・分布的支配性だけでは説明できない第3の支配性があることが立証されました。それが「時系列的支配性」です。

ビジネススピーチでは比喩表現の時系列的な配置が命

量的支配性とは、特定分野の比喩表現について「数が多いからその影響が大きい」と判断すること。分布的支配性とは「ムラなく分布しているから影響が大きい」と判断する手法です。

今回、追検証によって再度支持された「時系列的支配性」とは、スピーチの始めから終わりまでの時間軸において、すべての比喩表現の時系列的表出傾向にもっとも近似しているメタファ分野が持つ影響力を意味します。この研究結果は、数や分布の数値では明らかにできなかった、時系列を数値化する「メタファグラム」によって初めて明らかになったものです。

本研究はビジネス現場でのプレゼンターに大きな示唆を与えます。スピーチで比喩を使う時は「どんな表現を選ぶか」と同じくらい「どのタイミングで配置するか」を意識すること。この戦略的な言葉運びが、著名なビジネスリーダーのような説得力を生むのです。

なお、この研究結果は、さらなる追加検証(Shimizu, 2016; 2017)においても有効性が改めて支持されました。これらの論文は、概念メタファの時系列分析という新しい研究ジャンルにおいて、「メタファグラム」の可能性を示す研究群となっています。

「メタファグラム」とは?

概念メタファを時系列で捉える新しい分析法として、Shimizu (2010)が"Mental Distance Analysis" [メンタルディスタンス分析]として初めて提唱したものです。のちにその視覚図が"Metaphorgram"と名付けられました。メタファグラム分析の特徴は以下の2つです。
(1) 時系列での可視化:スピーチの進行に伴う(各概念メタファグループの)比喩表現の頻度変化を折れ線グラフ(標高形式)で表示し、話し手の意図や戦略的な概念構造の推移を時系列で捉えます。
(2) 概念メタファの相関:複数の比喩グループ(競争、旅、人間など)が、一定のスピーチにおける時系列上でいかに相互作用し、スピーチ全体の説得力に寄与しているかを統計的に分析します。

論文要旨 (転載)

本稿は、ビジネス英語スピーチにおける概念構造の特徴を明らかにするために、通算6年間分のビジネススピーチを分析・考察するものである。2010年のビジネススピーチ10本を分析した先行研究では、「概念メタファの時系列的支配性」の存在が示された。そこで本研究では、その先行研究の結果を更に検証することを目的とし、まず2005~2009年の5年間に発表された50本のビジネススピーチ・コーパス(素材集)を新たに構築した。12万語以上から成るそのコーパスを、話者の時系列的な概念構造を数値化する「メタファグラム分析」を経て統計処理をし、さらにそのデータを先行研究の結果と照合することで、「(1)量的」「(2)分布的」「(3)時系列的」という概念構造の3つの支配性の特徴を改めて検証した。先行研究と本研究を合わせて、2005~2010年の通算6年間分、約15万語に及ぶコーパスを用いた広範的な再調査の結果、先行研究によって提起された第3の支配性(時系列的支配性)の存在と特徴、そしてスピーチの概念構造における3つの支配性の「相互の関連性」が、本研究においても改めて支持された。


(References)
▶ Shimizu, T. (2010). “Mental distance” concept for chronological metaphor analysis of business executive speeches, Osaka Keidai Ronshu [The Journal of Osaka University of Economics], vol.60(6), 245-268. [リンク]
▶ Shimizu, T. (2014). Examining the dominance of conceptual metaphors in business speeches: The third factor, Kokusai Joho Kenkyu [The Journal of the Japanese Society for Global Social and Cultural Studies], vol.11, 56-67. [リンク]
Shimizu, T. (2015). An extensive study on characteristics of business speeches: A corpus-based approach to metaphors in business, Kokusai Joho Kenkyu [The Journal of the Japanese Society for Global Social and Cultural Studies], vol.12, 104-115. [リンク]
▶ Shimizu, T. (2016). A comparative analysis of conceptual metaphors in business and political speeches: A chronological approach, Kokusai Joho Kenkyu [The Journal of the Japanese Society for Global Social and Cultural Studies], vol.13, 3-14. [リンク]
▶ Shimizu, T. (2017). Metaphorical structures of business speeches reexamined: Insights from metaphorgrams of 110 business executive speeches, Kokusai Joho Kenkyu [The Journal of the Japanese Society for Global Social and Cultural Studies], vol.14, 3-14. [リンク]


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